第16話
どうやら噂になっているらしい。私のことが。依頼をすればなんでもする何でも屋だとか。くだらない。私はそんなものは興味がないけれど、シスターとしての信頼を勝ち得るまでは仕方のないことなのかも知れない。そして、そんな折だった。
「あの……もしかして………マコトちゃん……?」
礼拝堂をゆったりと歩いているとそう声をかけられる。久々に聞いた声だ。私は長椅子から立ち上がり、私を見る白っぽいワンピース姿の彼女を見る。
「申し訳ありませんがそのようなお名前の方はいらっしゃいませんよ。私はマリアと言います。以後お見知り置きをアイリス第二皇女殿下様」
恭しく一礼する。横目で見る。彼女の目は驚愕と安堵……そして疑問に包まれていた。まぁ確かに彼女には隠し通せるものではないと思っているのだが、私は自らバラすつもりもない。
「神へのお祈りは済みましたか?」
「え?あ、は、はい」
「でしたら良かったです。皇女殿下様に神のご加護があらんことを」
フッと笑みを浮かべ私は礼拝堂を去る。
「あのお嬢様が来たんだってね。どう?」
どう……とは一体どういう意味なのだろうかは言わずもがなだろう。
「えぇ、変わりませんよ。会ったからといって変わるほど私の気は変わるわけありません」
「確固たる意思だねぇマリアくんは」
「そのためにシスターになりましたので」
「確かにね。あ、紅茶いる?」
「いただきましょう」
ほんと神父様は掴めない人だ。だがそういったところが恐らく宜しいのでしょうね分かりませんが。そう考えていると紅茶を入れたカップを渡してくる。それを受け取り、そっと口につける。
「どう?おいしいかい?」
「……えぇ、おいしいですね」
「お口にあって何より」
それから一日という時間が過ぎるまで神父様と談笑を交わした。依頼もないので比較的暇だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます