第14話




 ウェンドリア大国の教会にシスターとして就き初日。


 「お初にお目にかかります。神父様」

 「きみがここのシスターにつくことになる……マリア……くんだったね?」


 私はお辞儀の後に顔をあげ頷く。


 「はい。マリアと申します。こちらにシスターとして配属されました。よろしくお願いいたします」

 「うん、よろしく頼むよ」


 私は頷く。


 「あ、そうそう。クロード家……だっけ?の関係者の人から聞いたけどこれをするんでしょ?」


 そう言いながら神父様は首の前で指をシュッと真横に振る仕草をする。私はクスッと微笑みつつ頷く。


 「わかった。依頼集めとくよ」

 「よろしくお願いいたします」


 挨拶はそれくらいにし、部屋を案内される。そうしてから私は神父様に渡された聖書を自室で読む。部屋が暗くなり、燭台に取り付けられた蝋燭に火を灯す。それでから聖書を再度読み始める。


 『ーーーーーーーー神とは尊び存在である』


 このような文言から始まり、ついほくそ笑んでしまった。神なんて存在することなんてないだろうと。私は敬虔な信徒ではないのだ。神がいるだなんて信じたことは一回もない。読み終えた後に私は息をつく。立ち上がりベッドに倒れ込む。意識が深い深い意識の底へと落ちてゆく最中に私は暗示をかけるように心の中で刷り込む。


 ーーーーーーーーーーー絶対に赦さない。涙を流そうとも私は……あいつらを殺す。殺して………そのあとはその時に考えればいい。今はとりあえず、明日以降の依頼からしっかりと演じよう。悪役ヒールを。誰かを救うのではなく、誰かを救済するのだ。


 そう心の中で言い続けながら私は眠りについた。


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