第5話

 あのお茶会の後から自然と耀樹のことを考え直すことが多くなった。彼のことは少なからず知っていることは多分みんなより多いと思っている。耀樹の好きなもの、嫌いなもの、誕生日、色々なものをボクは知っている。だからだろうか。ボクの向ける視線に気づいた耀樹は一つ質問をしてきた。


 「なぁ、眞琴……俺になんかあるのか?」


 と。ボクは考え込み、首を横に振る。


 「………ううん、なんでもないよ。だから、気にしないで」


 勿論、嘘だ。でも、耀樹にはバレる心配はない。ボクの嘘は「真実」になるから。あぁ、でも、なんだか悲しい気持ちになってくる。嘘をついてしまったことが悲しい。

 ボクはにこりと微笑み、視線をずらす。その先には、莉奈と聖人の視線があった。ボクは「うっ」と喉が詰まる感じがするが気のせいだと思い込む。


 「ん〜そっか。まぁいいや。なんかあったら言えよ?こんな俺でも力になっからよ」

 「う、うんありがと」


 少し気まずい……けど、気にしない。気にしないようにしなくちゃ。だって……ボクのこの気持ちはーーーーーーーーーーー





 「で?告白はしないの?」


 学園寮の女子部屋、いつもの女性陣が集まっている。その時に莉奈がボクに目を向ける。


 「うっ……い、いやしないつもりだよ」

 「えぇ!?それはなんでですの?」

 「きっと両想いでしょうに」

 「それは私も同感ね」


 三人の反応には打ち合わせでもしてたんじゃない?と思いたくなるくらい一緒だった。ボクは苦笑する。


 「だってこんなの釣り合いがならないから」

 「そんなこと言ったってあんたねぇ……」

 「そうですわよ!こんなの告白しないなんておかしいですわ」


 確かに三人の想いは当然だ。でもボクはするつもりはない。ボクは耀樹のことが好きだ。あぁ、それはわかってる。でも……


 「ボクは今の関係が心地いいから」


 この一言で片がつく。






 また、こんな夢……とても懐かしいと思ってしまうそんな夢。けれどこれは確かに起こった過去の出来事だ。わたしは一息ついてベッドから起き、そっと足を床につける。目の前の化粧台の鏡に映る私はひどく……


 「………嫌な顔。でも仕方ないわねあんなことをしでかしたんですもの。これは当然の報いですもの」


 椅子に座り、髪を整えていく。あの懐かしい夢から醒めた今の目は黒く澱んでいた。笑うこともできる。だがそれは仮面だ。私は本当の意味で笑うことができない。きっとその意味で笑うことができるとするなら目的を達した時にできるだろう。


 髪を整え終え、薄く化粧を施し今の「私」を作る。繕う。化粧も終わり、ネグリジェを脱ぎ、シスター服を着用する。さぁ、今日も演じよう。復讐に燃える私を。そして滅ぼそう。救世主なんてものはいないのだと。故に私はーーーーーーーーー


 「私は愚者になる」


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