第4話
ハインツ王国が開いた学園。エインリヒ学園。ボク、耀樹、莉奈、聖人は数ヶ月ぶりの学校だ。この学園の制服はボク的に好きだったりする。黒を主体とした制服にスカートは太ももの真ん中あたりのミニではあるが、タイツなりなんなり履けば、下着に関しては問題ない。ベストも学園の校章のワッペンが左肩につけられていて、あまり目立つようなものではない。ネクタイが学年で色が違う。一年が碧、二年が黒を少し混ぜたような暗めの赤、三年が紫紺となっている。
初めてこの制服を着用した時はスカートの短さに顔が赤くなったのはほんとに恥ずかしい限りだ。
「なぁ、眞琴」
「ん〜?なぁ〜に〜」
「この魔術理論?だっけか。全然わっかんねぇんだけど眞琴はわかるか?」
ノートに走らせていたペンを置いて、隣の耀樹のノートを見る。
「相変わらず適当だねこれ」
思わずそう言った。まず、字が適当なのである。これではわかるものもわかるまい。
「いや、だってよ……」
「だってもクソもないよ耀樹。はぁ……仕方ないなぁ」
ため息を漏らし、ついで苦笑する。そしてペンを再度持って彼のノートの空いている部分を拝借する。
「ここだけど、この魔術陣は重要となってるのがここの紋様。で、ここに魔力を流すことで魔術が発動するのはわかるでしょ?」
さらさらと文字を書き入れつつも彼にわかるように説明するのは一苦労だ。けれど教えることは嫌いじゃない。
「お、おぉ……まぁな」
「……?」
耀樹の方を見たときに少しだけ言い淀んだのを聞いて、態度を見て軽く首を傾げるけれど、どうもボクの説明で分かってはいないということでもなかった。じゃあなんでそんな態度をしたのだろうと思ったけれど「まぁ、いいや」と思い気にも留めないようにする。
「説明続けるよ」
「あ、あぁ、頼む」
「で、なんだけど、さっきこの魔術の発動を教えたでしょ?じゃあ今度はその逆。発動を阻害または相殺させる方法なんだけど……」
「ちょ、ちょっと待て。そんなこと教えられたか?」
「ん〜ん、全く。でも、今は教えられてないだけで後から教えられるよこれ。ちなみにさっきの授業がこれの手前だと思った方がいいよ」
「マジか……?」
「うん、マジ」
「マコトちゃんとヨウタさんは仲がよろしいんですね」
唐突にそんなことを言われた。
「はへ?え、な、なんのこと?」
白い洋風の東屋のようなところでボク、莉奈、アイリスさんそして同じクラスのダイヤさんの四人でお茶会みたいな
「確かに、お二方はいつも一緒にいますよね〜。もしかしてお付き合いなされてたり?」
「い……いやいやいやいや何言ってんの!?ボクと耀樹が付き合ってるわけないじゃん!第一そんな気なんて微塵も……」
「あ〜でもそれはあながち間違いじゃないかもよ眞琴」
確かに今のところほぼほぼ一緒にいるように見えるけど……けどどうしてそう映るんだろうか。
「そ、それこそ聖人だってそんな感じが」
「ないわね」
そんなバッサリ言う!?
「だって聖人言ってたわよ自分で。「もし、好きな人ができたら僕は告白は絶対に一回はする」って」
「え、それいつ?」
「だいぶまえよ。それこそこっちにくる前じゃない?」
へぇ〜聖人そんなこと言ってたんだ……驚きだ。
「でも、耀樹のあの態度は分かりやすすぎるわ」
「どういうこと………?」
「あら、マコトちゃんはわかりませんの?」
「もしかしてマコトさんは鈍感なの?」
え、何この空気。めっちゃ苦手な空気なんだけど……
「今日だってあいつに授業でのこと聞かれたんでしょ?」
「え、うん。わかんないとこあるからって」
「それが不自然なのよ。第一、私たちの中で成績が何げに高かったの耀樹だよ?」
「あれ、そだっけ……」
「テストの点数だって割と上位に入っていたくらいよ。そんな耀樹が確かにここは異世界よ。元の世界とは勝手の違う分野だけど、でも毎回聞きにくる?」
莉奈の言葉に薄々と理解できてきた。
「…………確かに」
「でしょ?だからつまりそういうことなの」
「え、えぇ〜……でもさぁ………」
いまだに納得がいっていない。なぜなら、耀樹にそんなことを思わせるようなことをしたのかすらわからないのだ。だというのに、いきなりそんなことを言われたところで何を納得しろというのだろう。これだから恋愛事情は鬱陶しい。
「じゃあ莉奈もアイリスさんもダイヤさんもわかってたの?」
「当たり前ね」
「はい、そのような気は以前から」
「じゃないかしらとは」
すごいなぁこの人たち。いや、自分が鈍すぎるだけか。
「でもほんと以外でしたわ。マコトちゃんとヨウタさんがお付き合いされておりませんでしたの」
「だってそんな空気微塵も感じられなかったし……」
ティーカップを両手でもち、縁に唇をつけ半ば顔を隠すようにする。
「どうするの眞琴は」
「どうするもこうもないと思うなぁ。ボクだってわかんないだもんそういうの」
カップを置いて、にへらと笑って、誤魔化す。でも、この時にはどうするかを決めておけばよかったんだ。そうすればあんな気持ちも起きなかったというのに。
「救済執行完了です神父様」
「うん、ご苦労様マリアくん」
仄かに揺れる蝋燭。そこにはニッコリと微笑む神父、そして顔にほんの少しだけ血がついたままのシスター。彼女の手には拳銃が握られていた。
「今日も珍しく自分で手をくだしたのだね」
「えぇ、今回の方は復讐対象でしたので」
「ふふっ。なるほど。マリアくん」
「はいなんでしょうか神父様」
「願いは叶えられそうかい?」
彼の問いに彼女は薄く
「叶うことはないでしょう。復讐というのは得てしてそういうものですから」
そういって、顔の血を拭い、会釈して立ち去っていく。そうだ理解していたのだ。復讐など無意味でしかないのだと。だとしても抑えきれないものがあった。ただそれだけなのだ。
「……愛する者たちを救えなかったから……か。ククッ……ハハッ……なんとも愉快なことだ。もう戻れることもできないというのに何を願うというのやら」
彼の愉しげな声音はそんな月の光で照らされた礼拝堂で響いた。その影は怪しげに揺めき消えていった。
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