第2話
何度か瞼を震わせたのちに瞼を上げる。するとどうだろう。目に飛び込んできたのはテレビや本などでしか見たこともないような洋風な調度品ばかり。恐らくどころかここは屋内。そしてこの建物を作り上げた素材は石材でその後に白く塗装をしたのだろう。と何故か周りを冷静に見ている自分がいる。
いや、もちろん驚いているけれど、見たことのない(生目で)ものには多少ばかりの興味が湧くというものだろう。そうした後に、自分の近くを見回す。そして安堵する。自分だけこんな訳のわからないとこにいるんじゃないのだと。まずは自分の左隣で横たわっている莉奈の肩を揺らす。
「莉奈、起きて」
「ん……んん〜……ん〜?なぁに〜もうまこ……え、どこここ」
何度か揺らせば目を覚まし起き上がりながらもキョロキョロと忙しなく辺りを見回す。
「ボクもわかんない。けどとりあえず耀樹と聖人を起こそう」
首を左右に振りそういって、自分は耀樹を莉奈は聖人を起こす。
やはり二人も同じような反応をする。ここはどこかだとか色々。聖人は普段の様子を取り戻す……が耀樹は未だに落ち着かない様子だった。それからしばらくしたら、ボクたちの後ろあたりから騒然とした声が上がった。ボクたちはそちらを見る。
「おぉ、まさか成功するとは……」
成功?それは一体どういう意味なのだろう。ボクはそっと眉を顰める。
聖人がみんなの代わりに声をかける。
「あの、ここはどこなんです?というよりかあなた方は誰なんでしょうか」
聖人の発破にその騒然としていた人たちの中の真ん中にいる人物がこういった。
「突然喚び出して申し訳ない。ここはウェンドリア大国。私はここの防衛大臣のジョン=ヴェン・イリスタイアという。よろしく頼む」
シルバーの髪を無造作に掻き上げたオールバックの男性が軽く頭を下げる。だけどどうしてだろう。理由はわからないけど何故か……心がざわついている。普段そんなことはないのに、何があるのだろうか。
いや、それは置いておくとして。ウェンドリア大国?それは全く聞いたこともない国名だった。ということは……?
「ここは……異世界……ってこと?」
ぽつりとボクの口からそう声が出た。三人はボクの方を見て、ボクは「ん?」と目を合わせる。
「え、だってそうでしょ?ボク達のいたとこにそんな名前の国なんてあった?それ系統の名前だったらヴァチカンくらいだよ?」
「……あぁ、そうだね……うんその通りだ。じゃあ、僕らは元の世界に帰れない……ってことかな?」
「え、待ってよ!
「………まじかよ」
ボク達の反応を見て、ジョンさんは慌てて口を挟む。
「あ、あぁ、いやもちろん元の世界に還せるよう努力をするつもりだ」
瞬間的にこの人は嘘をついているとボクは内心で理解する。この人は嘘をつくのが苦手なようだ。とはいえ、それをここで露呈するのは間違いだ。ボク達は顔を見合わせ、頷く。喚び出された理由はまだわからない。けれどどうやら還れるまではこの世界で生きていくしかないようだった。
暗い暗いだが、仄かに灯りの光源である何箇所かにつけられた燭台に立ち、炎を揺らす蝋燭が照らしていた。
「お、お前っ!い、いいい一体何の真似だ!」
「何のって救済ですよ?ふふっ」
そこには壁に背を預け、座り込む肥満体型の男。そしてその対面には黒い服を纏う小柄な女性。しかしその女性の背に隠された左手には似つかわしくないものが握られていた。
「あなたは一体どれだけの罪を犯したかお分かりでしょうか。私欲に至福を肥やし、救えたであろう庶民を蔑ろにしたことは明らかな大罪。貴族であるなら、当然すべきことをしなかったのです。あなたはそれを知っていながら、知らないふりをした。ですから、救済執行をするのですよ」
蝋燭で照らされた彼女の顔は笑っていた。しかしてその目は………笑ってはおらず、黒く澱んでいた。そして………
「神のご加護があらんことを」
「ひっ!?や、やめっ……!」
瞬間、その一室には轟音がなり響いた。ついでカランという何かが床に落ちる音。そう銃だ。その銃口は細く煙を上げていた。
銃を握る腕は下ろされた。そして彼女は右手で頭、胸、右肩、左肩と自身の体を使い十字を切る。そして、踵を返す。扉を開け、その部屋を退室する傍ら、一度肉塊となった屍体に一瞥し
「さようなら」
そう呟き、部屋を後にする。そのまま少し時間を要し、火が上がり始める。その火は銃弾により頭から脳漿を出し、血溜まりを燃やしていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます