第1話
「おはよ〜眞琴〜」
自分の机に両腕をおき、本を読んでいた最中に声をかけられる。ボクは顔をあげて、にこやかに笑って応える。
「おはよう〜莉奈」
「いっつもわたしよりも早いよね眞琴」
自分の前の席に座り、こちらに体をむけてくる女の子。彼女は坂志多莉奈。スタイルもよく、クラス内関わらず女子に人気のある少女。男子からも好評らしいけれどボクは聞き及んでいないから知らないが、彼女はボクに仲良くしてくれるとても好い人だ。
今日も綺麗に纏め上げた赤に近い茶髪を今日は珍しくハーフサイドにして、右肩に垂らしている。
「ん〜まぁねぇ。家にいても朝ご飯食べてからは何もすることはあんまりないしうだうだいても時間の無駄だしね」
クスッと笑いつつ読んでいた本に栞を挟み本をしまう。
「あれ、それって前も読んでなかったっけ?」
先ほどしまった本のことだろう。ボクは頷く。
「そだよ〜……って、よく覚えてるね」
莉奈の観察眼に我ながら驚きつつもクスクスと微笑む。
「え〜だってぶつかっちゃった時に落としたでしょ?それ拾った時にチラッと表紙を見たんだよ〜」
「確かにぶつかったね。でもそれでも覚えてるのもすごいと思うけどね」
「え〜そう?」
「うんそだよ?」
とそんな他愛ない話をしていると。
「よぉ〜今日も二人して仲睦まじいねぇ眞琴、莉奈」
ボクの後ろから声をかけられ、ボクは後ろを振り返り、莉奈はボクから見て、右側に体をずらす。
「
ボクの言葉に莉奈は眉を顰め、うぇ〜と引いた素振りを見せる。もちろん嘘だが。
「いや、ちゃうわ!!!!!」
即座にそうツッコミを入れてくるあたりさすがボクらの仲でのツッコミ担当なだけはあるね(勝手に決めた)
「ぷっ……ふふっ……もちろん嘘だよ何〜?信じたの?単純だねぇ〜耀樹は」
「あっはは!確かにw」
ボクはくすくすと莉奈はケラケラと笑う。耀樹は左の口許をピクピクと引き攣らせる。
「はいはい、そこまでね?眞琴、莉奈」
と制止の声を上げながら窓の縁に腰かけるように背を預ける男子生徒。耀樹がそれなりのがっしりとした体型ならこの人は少し細いだろう。だとしてもその立ち居振る舞いはなかなか様になっている。
「は〜いわかったよ
「りょうか〜い」
「いや、俺は悪くないとおもんだけど……?」
ボクは両手をあげてひらひらとして、莉奈は片手を小さく挙げて答える。耀樹は納得のいってない顔だが、聖人の「ん?」という微笑みで「うっ」と声を漏らし、渋々下がる。
「いや〜相変わらず手綱握るの上手いよね聖人」
「え、そう?」
「確かにそうよね」
「こいつ………怒らせたらやべぇと思うわ」
「えぇ、そんなに?」
三者三様の反応を返され、今度は聖人がたじろぐ。
そんなボク含め四人の馬鹿話はずっと続くと思ってた。そう。あの光に包まれるまでは。
パタンとどこかの一室で何かが閉じられる音が静謐な空間に響き渡る。多少の衣擦れの音も響き、誰かが立ち上がったことがわかる。その空間に今度は小さく空気中の大気を震わせてこう響いた。
「…………………待っててね必ず果たして来るから」
とーーーーーーーーーーーーーー
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