23話 モリア先生の基礎訓練ーアリス、マリン
・9月16日・ 昼 ……記憶の世界……
「今は13時だ。そうだな、18時まで各地で分かれて行う。時間は全て私の分身がわかるから安心しろ」
***
「ねぇ、どう言うつもり? ちゃんと聞かせてくれるよね?」
「なんのことだ?」
「この状況だよ! なんでこんなことをするの?」
「それは、さっき言っただろう、私の主人……鈴木陽太には死んでほしくないからな」
「……本当にそれだけ?」
アリスはモリアという存在をまだ疑っていた。
敵ではないにしろ何かを狙っているようにしか思えない。
鈴木陽太の特殊能力という考え方も間違っているかもしれない、そう考えているアリスは相当警戒している。
「そんなことより、目的地についたぞ。さて、訓練に入る前に聞いておくことがある」
連れてこられたのは岩に囲まれた場所。
ここも誰かの記憶だろうか、近くには小屋のようなものがあり、この岩の地帯以外はほとんど森だ。
「アリス、私は君が記憶を取り戻したと思っている。それで聞こう、お前は今どのくらい魔法が使える?」
「太陽、死霊、土、緑系統の魔法は上級まで使えるくらいだよ」
「……その年で、さすがだな。なら、そうだな……最初はこいつらと戦ってもらおう。上級召喚魔法"アタバス"」
モリアがそう唱えると、とてつもないほどの魔力があたりから集まっていき、それらは集合し、やがて一つの形を作る。
数十体のスケルトン、レクエノ、そしてその奥に待ち構えているでかい亀……アリスの記憶と一致するものならラピッドタートルというリスタの森の番人。
「これは……」
「そう。これらはあなたたちの記憶から取り出したものたち。ただ、強さと特性は全然違うから気をつけることね」
「……いいわ、望むところよ!」
こうしてアリスの訓練が始まった。
***
同時刻、マリンはモリアBに連れられ、陽太の家から離れた洞窟の前に来ていた。
ここも誰かの記憶なのだろう。
「マリン、あなたにはこの洞窟に入り、そして奥にある奥にあるこのコインを持ってきてください」
「……わかった、けどこれだけ教えて」
「なんでしょう?」
「モリア、あなた陽太さんとどういう関係なの?」
「……なんのことだ?」
「魔力の感じが陽太さんと似ているのと、雰囲気……かな? とにかく、ありえないくらい陽太さんに似てる」
魔族として自覚したマリンの五感は凄まじいほど研ぎ澄まされていた。
こう言った些細なことでもすぐ気づいてしまった。
「さすが魔族だ……そうだな、鈴木陽太に絶対に言わないと言うなら教えてやろう」
「……わかりました」
「マリンは特殊能力というものを知っているか?」
「はい。確か基本、王族の方が持っていて、魔法とは違った能力のことを言うんですよね。そして一般人に着く可能性が非常に低い」
「ほう。正式にはそうなのか……」
まるで初めて詳細を聞くかのようにモリアは興味深そうにしている。
「実は私は鈴木陽太の特殊能力らしいのだ」
「え、陽太さんの……!?」
たしかに、陽太さんはどこか普通の人とは違う雰囲気を感じていたがまさか、特殊能力を持っているなんて……しかもここまで自立型のものを。
「ここまで自我があるということは……ランクはA……いや、それ以上かも……」
マリンはぶつぶつと呟く
「……なぜ、陽太さんには教えないんですか?」
「口止めされてな、アリスに」
「アリスさんが……?」
言わないのは不思議だけれど、きっとアリスさんなりの考え方があるのだろう。
私はそっとしておくことにした。
「色々気になりますが、とりあえず始めましょうか」
「……他に聞きたいことはないのか?」
「大丈夫。……戦いのこと以外は何も考えたくないので」
「……なるほどな、わかった。じゃあ訓練にするか」
「お願いします」
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