22話 モリア先生の基礎訓練ー準備

・9月16日・ 昼  ……記憶の世界……


「よし、みんな休憩は取ったな……では初日始めるぞ」


 流れでモリアが戦い方を教えてくれるらしいが、なぜこうなったのだろう。

 正直分からん


「流れとしては簡単だ。最初の数日は戦闘時の考え方や基本、そして個別の課題をクリアしてもらう。これが基礎訓練だ。そして私が許可を出したものから応用訓練へと移る。とりあえずここを出るまでは最低、基礎訓練の完全クリアを目指して欲しい。どうだ、シンプルだろう?」


 俺はこの世界に来てから何人かに戦闘の仕方を教わっているが、それも一時的なものに過ぎない。

 なのでここまで本格的なものは初めてだ。


 ……俺はもう2度と大切な人たちを失いたくない。

 絶対に基礎訓練をクリアしてここを出なければ


「お前ら3人とりあえず横に並べ」


 言われた通りに横に並ぶ。

 モリアはアリス、マリン、俺の順番に並ばせると一人一人の顔を覗き込んだ。


「まず、アリス。君が求められているものはなんだと思う?」


「ええと……今私に求められるのはお兄さんのサポートを完璧にすること、かな」


「そうだ。よくわかってるな。お前がいくら強力な魔法を覚えようと、憑依時間が決まっているその状態ではほぼ無理だ。それに、戦闘力アップは鈴木陽太が頑張る。だからお前はサポート面を強化だ」


 ……モリア、まさか憑依のことまで知っているとは……本当に何者なんだろうか。


「だとしたら、この訓練でもっといろんな魔物を知って、知識を高めつつサポート系の魔法を練習、そして取得することが私の課題になるのかな」


「いや、知識はもういらない。十分だ。サポート魔法もできたらでいい。お前に1番させたいことは初見の敵にもすぐに対応できるようにすることだ。これからは魔物よりも魔族と戦うことがほとんどだ。その中で魔族にはデータがない。臨機応変な対応が必要だ」


「なるほど……」


「わかったか。わかったら一旦外で待ってろ」


「う、うん……」


 アリスはぎこちなく外に出ていく。


「次はマリン、お前は単純だ。自分でもわかるだろう?」


「はい……。制御、ですよね?」


「あぁ、そうだ。魔族にしかない力、"セカンドモード"はリリのを見てわかったと思うがとても強力なものだ。マリンはあの時、"セカンドモード"を出していたと思うが、あれは偽物だ。しかも制御されていない。とても未完成な状態だ」


「……やっぱりそうなんですね」


「そう暗くなるな。お前は正直に言って天才だ。すぐ使いこなせるようになるだろう。だからあまり心配はしていない」


「そうですか、ありがとうございます」


「わかったら外で待っていろ」


「はい」


 マリンも抜け、家の中には俺とモリアだけが残った。

 ちょっと気まずい


「……鈴木陽太、お前の欠点はなんだと思う?」


「……全部、としか出てこないな」


 戦闘経験も少なければ強いわけでもない。

 全て欠点というのも頷けるだろう。

 俺はこの中で明らかに悪い意味で次元が違う。

 弱すぎるのだ。


「まずは考え方、からだな……」


 モリアはため息混じりにそう呟く。


「よし、わかった。鈴木陽太、お前の最初の課題は自分の1番の欠点を見つけることだ」


「1番の欠点……?」


「そうだ。お前は全てが欠点と思っているらしいが、それは本当だ。弱いし飛び出た何かもない。だがそれは問題じゃない。1つとても致命的な問題がある。それを探せ」


 致命的な欠点……? 


「……わかった」


「そうと決まればさっそく行動だ。上級召喚魔法"アタバス"」


 突然目の前にいるモリアが光に包まれる。

 光が収まり眼を開けると、信じられないことにモリアが3人になっていた。


「んな!? えっ!? モリアが3人!?」


「そう驚くな、ただの召喚魔法だ。今からそれぞれに分かれて特訓を開始する。夕ご飯はみんな一緒だ安心しろ」


 そう言うと、モリアの召喚したモリア2人……ややこしいので、モリアAとモリアBと呼ぼう。モリアAとモリアBはアリスたちが待つ外に出ていった。


 そのあとアリスたちの驚いた声が聞こえてきたのは言うまでもない。


 

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