11話 合体魔法
・9月15日・ 昼 ……4つめの盗賊のアジト……
「ソニア! 俺たちも合体魔法するぞ!!」
「ええ!? したことないのに!?」
「ああ! 緊急事態だ! やるしかねえ!!」
(アリス……本当にできるのか? ていうか魔法の威力的に俺よりもアリスに変わったほうがいいんじゃないか?)
(ソニアさんもお兄さんも中級魔法が使えるし、仲もいいでしょ? 互いを信じ合えばきっとできると思うよ。合体魔法は互いの絆が大事。だから私とソニアさんじゃできないよ)
互いの絆か……本当にできるのだろうか、確かに仲がいいが、俺たちは会ったのはつい最近だ。
(信じなよ! 自分たちを、さっきまでコンビネーションよく戦ってたじゃん!)
そう、だよな……やるしかねえ!
(……本当は勧めたくないけどね)
(ん? なんか言ったか?)
(なんでもない!)
アリスの気持ちを読み取ろうとすると……怒り、嫉妬、ああそういうことね
(終わったらいっぱい2人の時間を作るから、な?)
(ありがと……)
「ちょっと陽太!! 時間ないよ!」
おっといけねぇ、話しすぎた。
(アリス! どうすればいい!?)
(とりあえずあの魔族みたいにお互いが触れ合った状態で魔力をためるの! そしたら後はお互いに詠唱するだけ!)
(おっけ!)
「ソニア! 手を!」
「ええ! わかったわ!!」
ソニアと手を握り、互いに魔力をためる。
握っていない手を前に出しお互いの魔力をその手の方向に集める。
(詠唱はどうすればいい?)
(合体魔法は人との組み合わせで変化するの、だから魔法が打てる条件になっていれば自然と頭の中に思い浮かぶよ!!)
思い浮かぶか……じゃあ思い浮かばなかったら失敗ということだ。
とりあえず祈りながら魔力をためるしかない!
「時間切れだね! こっちはもうたまったよ!」
声の方を見ると、アドロとメリッサは合体魔法の準備を終え、今まさに攻撃をしようとしていた。
「「初級合体魔法”ドラク・メル・リュビア”!!!」」
アドロとメリッサは唱えると、陽太とソニアの前に1体のトカゲ……いや、水でできたドラゴンが現れる。
ドラゴンは翼を広げ空高く飛ぶ、そして急降下し、こちらへと高速で向かってくる。
(まずい!! ……!?)
ドラゴンとの距離が約10メートルになったその瞬間、頭の中に情報が流れ出てくる。
「ソニア……感じたか?」
「ええ! この魔法は数少ない私と陽太の思い出の形ね……!!」
「ああ!そうだな! じゃあ、やるか!」
手に込めた魔力を一気に解放していく……
イメージするのはとても大きな亀、ただ普通の亀とは違う甲羅のない亀。2速歩行でまるで巨人のような見た目……
「「初級合体魔法”ラッド・ターク・メル・リャーマ”!!!」」
空からとても大きな何かが降り、ドラゴンの前に現れる。
水のドラゴンは吹き飛ばされ、やがて形を保てなくなり、消える。
「なっ!?」
「魔力切れ!?」
メリッサとアドロはドラゴンを保てなくなり、その場に崩れる。
目の前には火の巨人……今まさに拳を握り襲い掛かろうとしている。
もう終わりだと悟った2人は自然と抱き合い目を瞑った。
――巨人の拳がメリッサとアドロの前に大きく外れる。
陽太とソニアは魔法を解き、メリッサとアドロに近づく。
「気を失っているようね……」
「ああ、寝てる姿はこんなに可愛らしいのにな……」
「人を殺してるにはとても見えないわ」
真実はどうであれ、殺しているのは事実、この子達には後で聞くことがいっぱいある。
「中級緑魔法"ディア・プランタ"」
魔族2人を縛る。
「何はともあれ、全部終わってからだな」
「ディグミアとマリンが心配だわ」
「……リリっていう魔族には少し因縁があってな、マリンのところには俺に行かせてくれないか?」
「わかったわ。私はディグミアのところに行くわ」
「気をつけてね、相手は2級だ」
「ええ、そっちこそ!」
俺たちは手を離し、互いに違う方向を向く。
3級でもここまで苦戦したんだ、2級は……勝てる自信がない。
でも行かなければならない。
(マリン、待ってろよ……)
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