7話 迷宮の実態と対処
・9月12日・ 昼 ……地下迷宮、安全地帯……
「おい! てめえら! ここでなにしてやがる!」
安全地帯、分かれ道がある広い部屋で俺たちは男たちに囲まれていた。
数は10人以上、服装的に盗賊で間違い無いだろう。
「監禁された人を助けに来たのよ!!」
正直だねソニア……
「そうか、そのことを知ってるんだな……なら、殺すしかない!」
盗賊たちが短剣を構える……が、それよりも先に動き出したものがいた、マリンだ。
マリンは俺の抱っこしている手から即座に逃げ出し、盗賊達へ高速で突っ込んでいった。
それはこの前倒したラピッドタートルも驚くほどの速さだ。
マリンは盗賊の1人の腕を掴むと、軽く持ち上げぐるぐると体を回し始めた。
遠心力によって、マリンを中心に回転はどんどん力を増していき、ほかの盗賊達を吹き飛ばしていく。
目の前にいた盗賊達が全員吹き飛ばされると、マリンは自分の持っていた盗賊を投げ飛ばし、壁へと叩きつけた。
「え、ちょ、マリン! 壁は崩れるから危ないって!」
「え、そこ!?」
驚く点が、ソニアと俺で違ったらしい
ていうかマリン、強すぎるだろ、敵ではなくてよかったと思えるほどに強い。
俺ではまず勝負にならないし、ソニアでも……どうだろう。
盗賊達を見ると、ピクリとも動かなくなっていた。
「起き上がって……来ないのか」
操られているなら、倒しても倒しても起き上がってくると思っていたが
「あぁ、それね 操る魔法の魔力でその死体は動いてるの。魔力はそのものの体力に置き換わってると言っても良いわ、だからある程度攻撃してると、いつかは動かなくなるってことなのよ」
なるほど、でも倒せたのはいいけど、情報が何もないな
結局監禁している人がまだいるのかわからないし
(どちらにせよ操られた死体から情報を聞き出すのは厳しかったと思うよ。そこら辺マリンちゃんは分かった上で盗賊達を倒したんだと思うよ)
実はマリンって思った以上にかしこい子のだろうか……
(どちらにせよ情報がないね、お兄さん、ちょっと試したいことあるんだけどいいかな?)
(まぁ、俺にできることならなんでも良いぞ)
アリスが俺の体に憑依する。
最近は部分憑依しか行っていなかったため、この感覚も久しぶりだ。
「よし! 久々の感覚!」
「どうしたの? 陽太?」
(いけないいけない、言葉に出てたよ)
(おいおい、気をつけろよ)
(……まぁこれからは気をつける必要もないと思うけどね)
ん? どういうことだ?
「あはは、なんでもないよ」
「???」
ソニアは突然変わった陽太の雰囲気に困惑している。
そんなことなど気にせず、陽太に憑依したアリスは盗賊の1人の死体の前に手を出し、呟く。
「初級死霊魔法"マニ"……」
すると、死体が起き上がる。
「!?」
ソニアは驚いき、口をパクパクさせているのに対し、マリンは逆に驚くこともなく、平然としている。
(おい、アリス、どういうことだよ。死霊魔法使えたのか!? それよりソニア達にみられてるが、説明はどうすれば良いんだよ!)
(死霊魔法は死者を使うから実験出来なかったのよね、でもまさかぶっつけ本番で成功するとはね。状況説明はお兄さんよろしく!)
(丸投げしやがった……まぁ魔法の効果は知らないが、今使うということはそれなりに期待しても良いんだよな……?)
(うん! 期待してて!)
「……まず他に監禁された人はどこにいるのかな?」
「はい。この分かれ道のうち、手前の4個の奥には魔法陣があります。そこから砂漠の各地にあるアジトに転移することができます。まだ生きているかわかりませんが、監禁された人はそこにいます」
盗賊の死体がペラペラと喋り始める。
……え、これ初級魔法だよな? 見た感じ操ってるようにしか見えないが、こんな恐ろしいものなのだろうか、死霊魔法……
「やっぱりいるんだね……、次は、うーん、この迷宮について説明して!」
「はい。この迷宮は数年前にたまたま見つけた迷宮です。このフロアは迷宮ではなく、ただの安全地帯で、本当の迷宮はこれよりも奥深くのところからになります」
じゃあ1番最初の分かれ道、右行っていたら迷宮だったのか……
「うーん、他に何かありますかね?」
アリスはソニアに聞くと、ソニアはぼーっとしてた顔をすぐ直し、
「この奥にある魔法陣はどこに繋がっているの?」
「はい。この奥の魔法陣からは砂漠の秘密のルートに繋がっています。ただ、危険なので行こうとする人はあまりいませんが」
秘密のルートって……酒場で聞いたやつか
まさかこんなところにあるとは……
「時間的にあと1回かな」
やはり初級魔法だからだろうか、時間が限られているらしい。
「あなたたちの目的はなに?」
「はい。とりあえず攫って来いとしか、命令されていません」
ソニアの質問に答えると、盗賊の死体は元に戻った。
アリスは盗賊の死体に「ありがとう」と言うと、俺に体の所有権を戻した。
(目的は聞けなかったが、監禁された人のことを聞けたのはでかいぞ)
(そうだね、後でご褒美待ってるから!)
ご褒美か、またなでなで、かな……
「さて、これからどうするか……」
ソニアの方を向くが、そこでハッと思い出す。
「陽太……後で詳しい話を聞かせてもらうわよ……」
あ、ソニアへの説明どうしよう……すっかり忘れていた。
「でもとりあえず今は、監禁された人たちが先よ!」
よし、そのまま忘れてくれることを祈ろう……
「盗賊の話によると、この分かれ道の中の4つ、その奥に魔法陣があって、入ると砂漠のどこかにつながっている。そこにあるアジトに監禁された人たちがいるはず、って話だったね」
「陽太、秘密のルート見つけたから、時間に余裕はあるはずよ。もちろん4つとも行くわよね?」
「あぁ、もちろん」
俺は強く頷いた。
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