3話 謎の女の子
・9月12日・ 昼 ……ゾル・ダマル砂漠……
(あ、暑い……お兄さん、水分補給はちゃんとしてね……)
(あ、あぁ……)
ここが、ゾル・ダマル砂漠か……
不思議なもので、ゾル・ダマル村にいるときはまだ暖かいなと思った程度だが、砂漠に入った途端温度が急激に上がり、とても暑い。
これも魔力の影響なのだろうか
「ソニアは大丈夫か?」
ソニアの方を見るとピンピンしていた。
「私は大丈夫よ! 私はこれくらいの暑いところはまだ平気……寒いところは苦手だけどね」
それなら全然十分だよ……俺は両方とも無理だからな
この暑さに加えて、ゾル・ダマル砂漠では強い魔物が襲ってくる。
どれもリスタの森よりもやや強い。
というか厄介なのが毒を持っている魔物と、素早い魔物、そして体がとても硬い魔物だ。
素早いのは時間がかかるだけだが、毒と防御が硬いのは別だ。
まず俺たちには毒を回復する手段がない。
毒状態になればほぼ終わりに近い。
防御が硬い敵には、相当の攻撃力がひつようなのだが、今の俺たちにはない。
原因としてはパーティー内のバランスの悪さだ。
俺とソニアは戦いのスタイルが似ている。
メイン武器は短剣、とりあえず攻撃力よりも素早さを重視した戦い方、本当にバランスが悪いと思う。
やはり俺たちとこの砂漠は相性が悪い。
そう思う。
***
「そっち行ったよ!」
「おう!」
(アリス、部分憑依頼む)
(了解、初級魔法"リャーマ"!)
アリスが詠唱をするので、実質無詠唱魔法となるこの攻撃は基本初見で避けれるものはいなかったが、この砂漠の魔物は違う。
魔法を察知する機能でもあんのかよってくらい初見で避けられる
なのでほとんど短剣でとどめを刺しているわけだが、それだと時間がかかりすぎる。
魔法が効かない……これは結構大きな問題だ。
俺たち2人の1番強い攻撃、それが魔法だからだ。
何かいい方法はないものか……
「ん……?」
王様にもらったアイテムの1つが振動している。
「ソニア、
ソニアの方を見ると、もう魔物は片付いており、武器の手入れをしようとしていた。
「あ、うん! そっちいくね!」
初めてリュビを使うが、平気だろうか……
それはリュビを手に持ち、魔力を注ぎ込む……するとリュビに書かれていた'3'という数字が消え、'2'という数字になる。
リュビからは薄い緑色の水が飛び出し、やがてそれは俺たちを囲み、液体は固まりプルプルと柔らかくなり、それが結界となる。
「これが……リュビの効果か……」
この薄い緑の結界内はとても涼しく、快適だが……
「……いや、狭いな」
「だってこれ、1人用じゃん……」
「いやでも、もう少しデカイのかと思ったわけよ」
「まぁ私はいいけど……1時間以上もこの体制は流石にきついでしょ? ……こっち寝ていいわよ」
「そ、そうだな、すまない……」
「……」
「……」
この薄緑のぷよぷよの中は寝転んだり立てるようにLの形になるように設定されている。
もちろん寝転がれるように床にも緑のプルプルしたものが広がっている。
俺は1時間以上も何もしないで立っていられる自信がない、ので、ソニアと一緒に横になった。
だが、これはこれでまずい……
こんな狭い中で2人で横になると、当然肌が触れ合う。
まさかここまで狭いとは……
顔も互いの息がかかりそうなほど近い……
俺は無心になろうとするが、どうも落ち着けない。
これを後1時間以上は別の意味でやばい……!
(……ちょっと! お兄さん! 私が寝てる間に何やってるのよ!)
(貰ったデュビが1人用だったんだよ!)
(お兄さんと一緒に寝るのは私だけの特権だもん! ソニアさんとはいえ許せないよ!)
(あぁ、もうめちゃくちゃだ……)
絶対無理だろ、1時間……俺はそんなことを思っていた。
***
しばらく沈黙が続き、持っていたリュビが振動する。
「よし、もう少しで灼熱地獄が終わるぞ」
「うぅ……陽太……?」
ソニアはこの空間で寝ていた。
俺は当然のことだが、寝れるわけがない。
後もう少しで終わるから、とりあえずは一安心……
「んぅ……陽太って、抱き心地いいね……」
……お願いだからこの狭い空間で寝惚けないでくれ……
ソニアに抱きつかれている中、俺はあるものに目がいく。
「あれは……女の子!?」
なんと、この灼熱地獄の中外を歩いている女の子がいた。
足取りはフラフラで、いつ倒れてもおかしくない、そんな状態だった。
「おい! ソニア! いい加減起きろ!」
「ふふ……もう少しだけ……」
まじかよソニア……
(おい! アリス!)
(……スー)
(もしかして……アリスも怒って寝てる!?)
まじかよ……
ちょうどデュビの振動が収まり、薄緑の結界は解かれる。
灼熱地獄が解除されたのだ。
……それとほぼ同時に女の子も倒れた。
「ちょっ!? 大丈夫か!」
近くによると、女の子は妹の雅と同じくらいの子供、だが、至る所に痛々しい傷がある。
「もったいないが……使うか」
俺はリュビを取り出し、使う。
今度は'2'という数字から、'1'に変わる。
それを女の子方面に向けて液体を飛ばす、やがてそれらはL形になって固まった。
この中はとても快適だ。
何より涼しい。
治療はできないが、外に放置よりはこれでいいだろう。
「ちょっと、陽太! どうしたのよその子!」
「やっと起きたか……」
ようやくソニアが合流した。
「この子は酒場で噂になってた女の子だよ」
「なるほどね……でも本当にいたんだね、それにしても……この傷は酷い……」
「すまないな、緊急時とはいえデュビを1回分無駄にしてしまった」
「いや、いい判断だよ、これしか方法はないと思うしね」
「そう言ってもらえると助かる」
(お兄さん!!)
(ん?)
見てみると、薄緑の結界内にいる女の子の意識が回復していた。
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