2話 情報収集

・9月12日・ 昼  ……ゾル・ダマル村……


「リスタ遺跡の崩壊!?」


 心の中で驚いたつもりが、どうやら言葉にも出てたらしい。


「あぁそれね、私も危なかったよ〜、遺跡に入る前に宿屋で泊まっていたら急に遺跡が崩れた! って情報が入ってさぁ……でも、もし中にいたらと思うと……うぅ……」


 と、ソニアはブルブルと肩を震わせる。


「遺跡に行った時も1人だったのか?」


「陽太……どうしたのさっきから……とうとう頭おかしくなったのかな? 私はずっと1人だったよ」


 やっぱりか……


(アリス、記憶を書き換える魔法ってあったりするのか?)


(いや、聞いたことないけど……でも私も知らない何かしらの魔法は受けているとは疑った方がいいかもね……だってこんな急に、明らかにおかしいもん)


「何さっきからぼーっとしてるの?」


「いや、すまん。なんでもねぇよ」


「ふーん……ははーん、もしかして陽太、私に惚れてるんじゃないの? だからさっきもわたしが誰と一緒にいたのか気にしてるんでしょ? ……いや〜、でも陽太かぁ〜、確かにイケメンだけど束縛系か……ん? いや、まてイケメン束縛なんて最高じゃないか……」


「そんなことよりも、ソニアはここで何をしてるんだ?」


「何かしらのリアクションを期待してたけど、まさかガン無視とは……流石陽太だね!」


 なんか謎に褒められた


「そうだね、なんでここにいるかだけど……依頼の報告をするためだよ……ま、結局遺跡は崩れちゃったけど」


「依頼の報告か……まてよ、普通リスタ遺跡なら近くにあるサンリスタ王国に行くんじゃないのか?」


「あー、それ私も不思議だと思ってたけど、依頼を受けたの実はゾル王国なんだよね……報酬がとんでも無く高額だったからつい受けちゃった」


「依頼を受けたのはゾル王国……それは分かる、だがそうだとしたら俺とリスタの森入口で会うのはおかしいだろう?」


 地図で見るとゾル王国は南、サンリスタ王国は真ん中、そしてそのちょっと横側にリスタ遺跡がある。

 ここでおかしいのが、遺跡に行くとなるとわざわざ森の入り口を通ることはないのだ。

 むしろ遠回りだ。


「あはは……恥ずかしい話なんだけど、聞く?」


「できたらでいいぞ」


「……じゃあ話すね」


 ソニアが話したのは以下の通りだ。


 ゾル王国には転移魔法を使える者がいて、その人は各地に人を送り届ける仕事をしている。

 転移先は番号で分けられているのだが、ソニアは利用する時に転移先の番号を間違えてしまったのだ、本当は1発で遺跡にいけるはずだったが、ソニアの間違いにより、リスタの森の入り口へと転移されたのだ。

 その後混乱していたら俺を見つけ合流


 と、大まかにこんな流れらしい。


「その……なんていうか……結構おっちょこちょいなんだな」


 俺はかける言葉が見当たらず、とりあえずはっきり言っておいた。


「うぐぐ、言い返せない……記憶から消し去りたいわ!」


(ナチルのことじゃ無くてそのことを忘れてればよかったのにな)


(ほんとにね)


「陽太たちは何しているの……?」


「あー、それはだな……」


 これまでのことを話すことにした。


 国王との謁見、そして魔王討伐のこと


「え、陽太には無理でしょ、魔王討伐なんて」


 割とはっきり言ってくれるな……だが、その通りだ、未だになぜ俺にそんな命令をしたか謎だけどな


「まぁ、助っ人はいるらしいが……」


「あら、誰よそれ?」


「ラルバ、って名前らしいが、知ってるか?」


「……ラルバ王子のことね……」


「え、知ってるのか? ていうか、王子様?」


 聞いてないぞ、そんな話……


「うん、ただ会ったことはないけれど、噂では落ちこぼれ王子なんて言われていたわね」


「落ちこぼれ……? 国王からは'最強'と呼ばれていると聞いたが……」


「その国王も人が悪いわね、確かにラルバは'最強'とも言われているわ……ただ、正確には'最強最弱'と、そう呼ばれているわ」


「は? なんで'最強'と'最弱'が同居してるんだよ?」


「それはわたしも詳しくはわからない。けど、毎年行われている武術大会で、ずっと予選落ち、ちなみに今まで勝ったところは一回もないみたいだよ」


「'最弱'なのは分かった……でも国王はなんで'最強'って言ったんだよ、意味がわからないな」


「まぁ1度会ってみるしかないわよね」


「なぁ、ソニア」


「ん?」


「俺たち目的地は同じなんだし、せっかくだからそこまで一緒に行かないか? 俺も初めていく道で不安でな」


「いいよ! ていうか、ちょうど私も言おうとしてたところよ!」


 というわけでまたソニアが仲間に加わった。


         ***


「まだ……出発できないねぇ……」


 と、ソニアは酒場にあるランプを見つめ、そう呟く。


 このランプは町中の至る所にあり、灼熱地獄バーニング・ヘルの状態を教えてくれるのだ。

 このランプは特殊なアイテムで、灼熱地獄時の魔力の流れを感じとり、あとどのくらいで灼熱地獄が終わるかを色で表している。


 ちなみに今は赤、これは最高ランクで灼熱地獄真っ盛りだ。黄色になると15分ほどで青に変わる。

 青になると灼熱地獄は終わったということを表す。

 なんか信号みたいだな


 今は真っ赤、なかなか黄色に変わる気配がない。


「とりあえず……情報収集を少ししてから、各自自由って感じで」


「ええ、わかったわ!」


 ということで各自情報収集、20分ほどで集まり、話をまとめた。


 情報収集の結果は以下の通りである。


・リスタの遺跡が崩壊

……リスタの遺跡が崩壊した。幸いにも死傷者はいなかったが、遺跡に関しては入れなくなるくらいまで崩壊している。


・謎の女の子

……砂漠を歩いていると、女の子の幻覚が見えるらしい。それも、灼熱地獄中に、この状態での砂漠横断は人間にはあり得ないと言われているので幻覚?幽霊? と、色々話題らしい。


・砂漠の秘密の場所

……砂漠には秘密のルートがあり、そこを通れば、すぐに着くらしいが、そこは噂ということもあり、本当にあるかどうかはわからない。


「なんかこう、どれもパッとした情報がねえな」


「え? そう? 砂漠の秘密の場所を見つけると早くゾル王国に着くって情報! これいいんじゃないの?」


「え、いやでも見つけた人いないんなら結局意味なくない?」


「……それもそうね」


「まぁでも少しでも情報を手に入れられたのはよかった……よし、これからの予定だが、各自自由で、30分後にまたここに集まろう」


(わーい! 水浴びる!)


(わかった、まずは水浴びような)


「私はちょっと使えそうなもの買ってくるね」


「おう、また後でな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る