17話 謁見

・8月29日・  朝   ……サンリスタ城下町、宿屋……


 今日は王様との謁見の日だ。


(こ、こんな服装で平気かな? アリス?)


(大丈夫だよ! 服装がアレだとしても、お兄さんは顔はいいから!)


(容姿を褒められるのは嬉しいけど、今気になるのは服装なんだよなぁ……)


 俺は5日前に王国騎士団副団長であるミュゲルに会ってから、毎日仕事をしていた。


 というのも、この前した子供達の世話というのが、子供達からはもちろんのこと、親からも好評だったらしい。


 親としては、みんな忙しい状況。


 そんな状況で、お試し感覚で募集した依頼に、親切に対応してくれる人が引っ掛かるとは思わなかった、らしい。


 親切って言うのは子供達の話を聞いてらしいが




 ……初めての顔合わせの時の子供の親の顔は今でも忘れない。

 見極めるような、険しい顔で見られながらの会話……だが、会話が終わるとにっこり笑いながら、「あんたなら任せても良いかもね、主婦の勘だけど」と、言ってくれた。


 仕事が終わった後も、「やっぱりあんたに預けてよかったよ」と子供達の顔を見ながら言ってたっけな


 ……まぁそのこともあり、親から直接俺に対して依頼が来るようになった。


 俺としては、他に受ける仕事を探すのも手間がかかるし、子供達との約束もあったのでこの仕事は俺にとってもとても嬉しい。(給料もいいし)


 まぁそのお金で服を買ったのだが……


 アリスのアドヴァイスを聞こうとしたが、アリスは村から出たことないので、服のレパートリーが少ないらしい。


 なので自分自身で選んだ、と言うわけだ。


 本当は貴族の着るような服を選びたかったのだが、やはり高い!!


 しょうがないので、冒険者用の服を買った

 元の服はボロボロだったので、それよりはマシだろう、とは思う。



 コンコン


「お客様、お忙しいところ失礼します。王国から使いの者が到着致しました」


「わかりました、今行きます」


         ***


「あなたが陽太様、ですね」


 そこにいたのは黒髪の……メイド?

 身長は俺より少し下くらいの美しい女性だ。


「あ、はい。初めまして陽太と言います……」


「私は、今日の間限定で陽太様のメイドを任されましたキャシーと申します。よろしくお願いします」


 え、やっぱりメイドさん!? は、初めて見た……


「よ、よろしくお願いします」


(お兄さん……見惚れてるでしょ?)


(いや、初めてメイドさんにあったから驚いただけだよ!)


(ほんとかなぁ……)


「もうそろそろ出発しないといけません。準備は平気でしょうか?」


「はい、平気です」


「わかりました。それでは出発致します」


         ***


 ……こんな豪華な馬車に乗っていくのか


 宿屋から王国まで歩くと結構時間がかかる。

 馬車に乗るところまでは想像していた。

 でも、まさかここまで豪華な馬車は想像してなかった。


 そこら辺にある馬車とは違い、装飾がとても多く、座るところはふわふわしている。


「……」


 キラキラしている馬車内をチラチラ見ていると、


「申し訳ありません。お客様を乗せるとなると、1番良い馬車で迎えるのがサンリスタでのしきたりなのです。このようなのはお嫌いでしたか?」


 優しくキャシーが話しかけてくるが、別に嫌いなどではない。


 ただ、混乱していただけだ。


「そんなことないですよ! とても綺麗で美しい馬車です!」


「それなら良かったです」


 と、笑顔で返答してくれる。


……笑顔が似合う女性って言うのがしっくりくるな


 馬車の中では9割ほど沈黙だった。

 ただ、俺はアリスと会話していたお陰で気まずいとは思わなかったが、


 城には9時に着いた。


 控え室でアリスと喋りながら暇をつぶし、ようやく王様に会う時間となった。


         ***


「こちらです。くれぐれも粗相のないようにお願いしますね」

「はい、ありがとうございます。キャシーさん」


 俺は深呼吸をし、謁見の間へと進んだ……


 中には兵士5名と、大臣のような者が1人、そして真ん中に座っているのが国王だろう。

 国王と聞いたときにはおじさんのイメージがあったが、若い。

 綺麗な赤髪に凛々しい顔、凄まじい存在感を放っている……これが国王か……


「お目に書かれて光栄です。国王様」


 俺は、片膝を立てて頭を低い位置にする。


 キャシーに事前に王への対応を少し聞いててよかった……



「うむ。我が名はクロイ・ホワイト・サンリスタである。陽太だったか、何用で来たか申すが良い」



 ……俺は自分は異世界から来た、と言うことと、この国の国王になれば助けてくれると言うことを王様に説明した。


 普通ならば信じてもらえないと思うだろうが、俺は親父を信じていた。

 サンリスタ王国に行き、国王に事情を話せば助けに来てくれる、と親父は言った。


 どちらにせよ頼れるのはもう国王しかいない。

 他の方法がない以上、これしかないのだ。


 ……国王は俺の話をじっと聞き、目を閉じた。

 他の兵士たちも大人しく話を聞いている。


 ……こんなぶっ飛んだ話をみんな信じるのか?


 1分経つが国王は静かだ。すると、

「なるほど、話はわかった。いいだろう、其方に協力してやろう」


 ……え? こんな簡単でいいの? こんな簡単にいくと何か裏があるかと疑いたくなるぞ


「我も魔族の活発化については怪しいと思い調査を進めていたところだ。その過程でこの街の失踪事件とやらも魔族が原因なのも突き止めている。其方の世界のこともな」


 俺の世界のことも知っていたのか……だからそんなに驚かなかったんだな


「そして我等はたどり着いた。それらの魔族を束ねているのは魔王だということを」


 魔王……? でも魔王が従っているのは大人しい魔族だけだとアリスから聞いた。

 俺の世界にいた魔族やアリスを襲った魔族は過激派で魔王には従ってない、と言うのが今の俺の知識だが……


「其方の考えていることはわかるぞ、過激派は魔王に従ってはおらぬと言うことだな、だがそれは、魔族の動きを悟られず、一部の魔族を動きやすいようにしたという嘘だ。そちの世界のこともこのサンリスタでの誘拐も魔王の指示による命令だろう……」


 もともとこの世界での魔王というのは俺の世界で聞くような魔の王という印象ではなかった。

 魔族の国の王様、そこから魔王呼ばれているだけだ。

 人々から恐れられているとかそういう話は一切ない。むしろ国民から好かれていて、他の国とも関係がとても深く、いい国の王様と聞いている。

 ……表ではそんな評判でも、裏はやっぱりあるんだな


「……陽太よ、其方に魔王討伐の命を与える」


「へ……」


 え、俺が……討伐!?

 確かに自分でどうにかしたいが、俺にはそんな力はない……


「安心しろ、助っ人がいる。ここから南にある緑の国に行くが良い。そこには最強と呼ばれる者がいる。名をラルバ。その者と協力して、魔王を討伐するのだ」


「……ハッ!」


 思い出したように返事をしたが、

 討伐か……まさかこんな流れになるとは思わなかった……

 助っ人もいると言うが……不安だ。


「それともう1つ確かめたいことがあってな……」


 国王はもう1つの話を切り出した。

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