16話 お呼び出し
・8月24日・ 昼 ……サンリスタ図書館……
知識を蓄えるのは大事だ。
今は使えない知識でも、いずれ役に立つかもしれない。……また今度来よう……
「ほらみんなもう夕方だ、帰る……って、やけにおとなしいと思ったらそういうことかよ」
テーブルの方を見るとアランくんとブレインくんは伏せて寝ている。僕の膝の上にいたキリエちゃんも僕にもたれて寝ている。
こういう光景を見るたびに思う。
本当に誘拐事件なんてあるのだろうか、見た感じすごく平和そうだが……
(でも、お兄さん、気を抜いたらダメだよ)
(わかってるよアリス、ありがとう)
***
子供達を起こし、俺たちは図書館をでた。
辺りはもう夕方、このサンリスタ王国は城に近づくほど坂を上がっていく形になる。
つまり城に近い図書館は高い位置にあるため、前にある町をある程度見渡せるのだ。
図書館の前にはベンチもあり、そこから見える町は夕日に照らされ、とても美しくあたりを照らしていた。
「……!! 綺麗だよ! 陽太おにいちゃん!!」
「おい! おじさん見ろよ!!あそこに俺の家があるんだぜ!」
「こら2人とも危ないだろ、それにおじさんじゃなくお兄さんでしょアラン」
たしかに、すごい綺麗だ……このサンリスタ王国は美しいところが本当に多い、くっ……カメラが欲しい!!
「また、一緒にここ来たい……」
隣にいるキリエちゃんがそう言ってくる。
っていうかナチュラルに手を繋いでるけど、いつそんなに俺たち仲良くなったんだよ……
「おじさんは、おじさんでも、いいおじさんだからな! しょーがねぇから、また一緒に来てやるぜ!」
……いつまでおじさん言うんだよ
「せめて、お兄さんだろアラン、まったく…… あ、陽太さん僕も楽しかったです! ありがとうございました!」
「あぁ、またこのバイトやるから、そのときにまたみんなで来ような!」
「約束だよ! 絶対ね!」
夕陽をバックに子供の笑顔、うん素晴らしい、本当にカメラが欲しくなるわ……問題が解決したら考えてみるか。
***
そのままみんなを家に送り、俺は報酬の銀貨2枚をもらった。 そのまま宿屋に戻り、部屋のベットに寝転がり、天井を見上げる……
(本当に銀貨2枚だったよ……)
(ただ遊んだだけでこんなにもらえるとはね……お兄さん、運が良いのかもね)
(はは、そうかもな……)
今日1日は仕事とはいえとても楽しかった。
ただ、楽しければ楽しいほど、こんなことして良いのかと……思ってしまう。
焦っても良いことはない、王様をとにかく今は待つしか方法はないのだ。
……さすが連絡が来なかったら無理矢理会いに行くのも手かもしれない……
(なぁ、アリス……)
(なに? お兄さん?)
(ずっと思っていたけど、なぜ俺のために色々してくれるんだ? 勉強だって魔法だって見てくれる。 確かに俺の体にいるからかもしれないが、それにしては本当に俺は世話になり過ぎている)
(それはね……)
コンコン
ノック音? タイミング悪いなぁ
「お客様、お休みのところ失礼します。お客さまにお会いになりたいと言う方が来られていますが」
俺に会いたい人? 誰だろう
「ありがとうございます。今行きます!」
俺は1階へと行き、その人と会うことにした。
「君が、陽太くんかな? 私はサンリスタ王国騎士団副団長ミュゲルと言う。よろしくな」
サンリスタ王国騎士団副団長? 結構偉い人なんだろうか……
「初めまして陽太です。 えっと、その騎士団の方が僕に何のようでしょうか?」
「国王様が5日後、8月29日に貴方に会いたいと申されておる。どうだ?」
え、つまり謁見ですか!?
こんな早くくるとは……いや、嬉しいんだけど、1日で返事が返ってくるとは思わなかった。
長くても3ヶ月は待つつもりでいた。(それでも短いけど)
「是非! お願いします!」
「あぁ、じゃあ29日、朝10時ほどに使いを送る。待っていろ」
「あ、ありがとうございます!」
そう言うと、ミュゲルは宿屋を出て行った。
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