15話 調べ物

・8月24日・  昼   ……サンリスタ図書館……




 ん? 




「んしょ、んしょ」




 キリエちゃんが高い位置にある本を取ろうとしてるが、危ないな、助けてやるか。




「大丈夫か? ほれ」




 俺は高い位置にある本を取るが……






 うわ、何語だこれ、読めねぇ、この世界の子供はこんなの読むのかよ




「あ、ありがと」




 ……こんなことをしてると妹と図書館に行ったことを思い出すな……




 キリエちゃんはどことなく小さかった雅に似ているな……




「……陽太おにいちゃん……」




 ん?


「あぁ! すまんつい!」




 気がついたら頭を撫でてた。


 くっ……これが妹発作というやつか……我ながら恐ろしい……




 ……早く王様に会わなきゃな




(……お兄さんってさ、小さい子好きな人なの?)




(子供は好きな方だぞ、元気をもらえるしな)




(ふーん……)




 ん? なんか変な勘違いしてないか?


(おい、俺はロリコンではないぞ)




(……まさか私の頭を撫でたのって、そういうこと……?)




(ちげえよ! たしかにアリスは小さいけど、そんな目では絶対見ないわ!)




(……あ、そう!)




 なんでそこで怒るんだよ、くそ、こういう時に限ってアリスの感情がわからん。




「陽太おにいちゃん?」




「あ? あぁ、ごめんな、ぼっとしてた」




 アリスと話すと周りが見えなくなるのを直さなきゃな……




 っていうかいつのまにか、呼び方が陽太おにいちゃんになってる、少しは仲良くなれたのだろうか






         ***






 子供達はみんな好きな本を持ってきてテーブルに座る。


「……」


「おい、この本すげーぞ! おじさんも見ろよ!」


「アラン、図書館では静かに、あとお兄さんでしょ」




 ぶれねえなこいつら、っていうかなんでキリエちゃんは俺の膝の上にいるんだよ……好かれたのはいいが、このままだと俺も本を探すことができない。




「えっと……キリエちゃん、申し訳ないんだけど……俺も本を探してきていいかな?」




 すると、キリエちゃんはほっぺをムクっと膨らませて


「……いいよ」




 と言った。


 ……こんなリアクションだと行きにくいが、仕方ない。なるべく早く帰ってこよう。






         ***






 俺は一階から順に気になる本を取っていくことにした。




 それにしても本当にいろんな本があるなぁ




 ざっと見て、


『魔法大全』




『エスパラルダの歴史』




『筋トレ集』




『種族について』




『誰でもわかる! 魔法』




『魔法学校に行く理由』




『5つの大国』




『世界の12の魔獣』




『主婦必見! お料理レシピ!』




『世界の10の聖獣』




『魂の研究』




『エスパラルダの秘密』




 ――流し見してきたけど、気になるものからもうでもいいものまでいっぱいあるなぁ




 流石にたくさんは持ち歩けないので、5冊ほど選ぶことにした。




 俺は子供達のいるテーブルに戻り、席に座る。


 すると自然にキリエちゃんが俺の膝に座ってくるが、気にしないでおこう。




 選んだ5冊の内容を少しまとめると、














『エスパラルダについて』(子供用の本)


 ・この世界のことをエスパラルダという。


 ・エスパラルダの端まで行くと全て崖になっていて、下が見えない。なのでエスパラルダは巨大な山の上にあると言う説がある。


 ・種族はさまざまである。




 他はアリスから聞いた情報とほとんど同じのようだ。まぁ子供用だからな














『魔法大全』(でかい本)


 ・魔法にはさまざまな種類があるが、主にほとんどの人が使える魔法を基礎5大魔法と言う。


 ・昔は6大魔法だったらしいが、詳しい記述はない。


 ・魔法には使えるランクがあり(例外もあるが)、それぞれ初級、中級、上級、最上級の4ランクだ。


 ・使える魔法によってできることが増えてくる。例えば


中級魔法を使えるようになれば魔力コントロール


上級魔法を使えるようになれば混合魔法


最上級魔法を使えるようになれば魔力の大幅上昇


 と、このように魔法を極めればさまざまなことができるようになってくる。




 ナチルは上級魔法も使えるってこと……だよな、隠してたのだろうか。それと気になったのはまとめはしなかったが、回復魔法がない、ということだ。


 回復のないゲームを考えると……相当ハードモードだな……














『世界の12の魔獣』(子供用の絵本)


 ・世界には12の魔獣がいる。


 ・それはとても恐ろしく、会ったら生きて帰ることはないと、言われている。




 子供用の絵本なので、早く寝ないとこの魔獣達が襲ってくるぞ! みたいな内容だった。




 正直見なくてもよかったな……














『魂の研究』


 ・なにか膨大なエネルギーには代償が必要だ。例えば魔法には魔力など


 ・もし、魔力が切れた、足りないなどに陥った場合はどうしたらいいのか、簡単だ、他の代償を用意すればいいのである。


 ・例えば生命力、寿命や、精神力を魔力に変換して行うことで大魔法を発生できることもある。


 ・魂とは何か、それは生命力、精神力、魔力、さまざまなものの塊である。体は基本抜け殻に過ぎず体によって変わるのはその体の持つ運動能力のみ、現に人以外の生物で、他者に乗り移る生物はとても多い。


 ・ごく僅かな可能性で1つの体に2つの魂が存在する生物もいる。その生物を研究したところ、さまざまな可能性が見つかった。


 ・その可能性の中でも特に興味深いのが、魂の一時的同化、つまり2つの魂の融合だ。2つの魂が一時的に1つになることでさまざまな身体的能力が向上することが研究として上がっている。




 ……他にもいろいろ書いてあるが、長いし、難しい。ただ、この1つの体に2つの魂、これは気になる。ぶっちゃけ俺とアリスがその部類に入るだろう。魂の融合……か














『エスパラルダの秘密』


 ・この世界以外にも他の世界がある。


 ・ここは裏の世界。どこかに表の世界があるという。


 ・エスパラルダの端にある崖、その下は……だ。(古びていて読めない)


 ・今は忘れられた幻の回復魔法、この世界のどこかに必ずある。


 ・最上級……がある(古びていて読めない)


 ・この本は読み次第跡形もなく消滅する。




 ……へ? 本が……消えた。




 まじで消滅しやがった。




 一応気になるところを上げておくと……ここは裏の世界、つまり表の世界は俺の世界なのだろうか、


あとはエスパラルダの崖の下、何かがあるのは間違いない。




 ――まぁ、こんなものだろうか、はぁ疲れた、絵本も含まれていたとはいえ、5冊も真面目に読むと流石に疲れる。




 でもおかげでいろんなことがわかった。


 いや、魔族については何もわからなかったな……




 ……え、選んだ本ミスったかな……?


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