4話 村人の謎
・8月2日・ 夜 ……アリスの家……
アリスが夕食の支度に戻ったので俺は少し休むことにした。
……どうも1人になると不安になってしまう、親父や母さんは大丈夫か、雅は大丈夫だろうか、その考えが頭の中でループする。
「お兄さーん! 晩御飯できましたよー!!」
「はーい」
……今は、この世界のことに集中だ。
俺はすぐ部屋を出て木のテーブルに置いてある食事を見た。
「え、これ1人で作ったの?」
テーブルの真ん中にはでかい鍋にシチューが入っている。
とても美味しそうだ。
「ふふん!」
アリスは腕を組んで喜んでいた。
思っていた通り、アリスの作った料理は味も美味しい。
アリス自身も俺のお茶がなくなったら継ぎ足してくれるし、話も楽しそうに聞いている。
ほんといい子だな、まるで妹がもう一人増えたみたいだ。
……こんなこと思っていたら本物の妹に殺されそうだな
***
「ごちそうさま。とても美味しかったよ」
「美味しそうに食べてくれるから私も作った甲斐があったよ!」
嬉しそうでよかった。
ご飯を食べている間アリスはずっとこっちをみていた。
「えっと、お兄さん。そういえば村の人から魔法を襲われない理由を話さなきゃね」
「あまり話したくないんなら言わなくてもいいんだぞ?」
「いや、いずれ知ることだからお兄さんに知っていてほしいの」
そういうとアリスは奥の部屋へ行く。
「お兄さん、こっちにきて」
とりあえずついていこう。
……そこはとても暗い部屋だった。
不気味なほど外は静かで、夜なのであたりも暗くなっている。
部屋の真ん中には小さいテーブルに蝋燭一つ立っている。
その奥に椅子があり、そこに1人の老女が座って居た。
「おばあちゃん」
アリスは悲しい顔でおばあちゃんらしき人物を見つめている。
「この人は……」
アリスのおばあちゃんだろうか
おれは軽く頭を下げた
「えっと、こんばんは」
……返事がない。
「……急に連れてきてごめんね? 見たほうが早いと思って……」
それからアリスは話してくれた。
おばあちゃんが急に喋らなくなり、動かなくなったこと、
それは村の人たちも一緒で、村の人たちとこのおばあちゃんはご飯も食べず、寝ない、まるで生きていないかのような感じらしい。
でも体は暖かいらしく生きているらしい。
「……そんなことが」
見た感じ病気……ではなさそうだ。
この世界には魔法もあるんだ、もしかしたら説明できないような力が働いているかもしれない。
だが、このおばあさんだけでなく、村の人もか……
アリスの表情が曇る
「……とりあえず俺も時々話しかけてみるよ。前はみんな喋れてたんだろ?」
俺にできるのはこれくらいしかないからな
「うん……」
大丈夫だ。きっと戻るなんて、簡単に言えるが
ここであまり無責任な事は言えない。
俺は……そっと頭を撫でた。
「……」
サンリスタ王国にはおそらく本がいっぱい置いているだろう。
そこから色々探してみようかな
「あ、ありがとう……お兄さん……」
「……」
アリスは涙声だ。
「……あ! も、もうこんな時間! 早く寝ないと! 明日は早いんだから! おやすみお兄さん!」
アリスはそう言うとすぐ部屋から出ていった。
あまり自分が泣くのを見られたくないのだろう。
今日は……すぐ寝るか。
俺は自分の部屋へと戻った。
そしてまた1人になる。
色々ありすぎた。
……けれども今日は寝れるだろうか
不安ばかりが残る……
***
・8月3日・ 朝 ……アリスの家……
コンコン
「お兄さん、もう起きてる?」
「……あぁ」
結局夜中は少ししか眠れなかった。
「朝ごはんもうできたから!」
「ありがとう、今行く」
異世界に来て2日目が始まる
ご飯も食べ終え、魔法を習う時間になった。
アリスから聞いた話によると魔法習得の入門編は1週間と少しかかるらしい。
まず特殊な素材でできた練習用杖を使い魔力の弾、通称"魔弾"を作る。
だいたい3日で出るようになるらしい。
次に杖なしで魔弾を作れるようにする。これを1週間ほど、これでようやく初級魔法の練習に入ることができる。
とりあえず俺は魔弾を使えるように……というのが最初の目的だ。
「ほら、目をつぶって……力まずに体の中を探ってみて……魔力が体の中にあるのがわかる……?」
「…………わからん」
「……まあ最初はそうよね」
アリスはニヤリと笑い俺の腕に絡みついてきた。
「!?」
「ほら、落ち着いて、今から私がコツを掴ませてあげるから!」
……突然周囲の雰囲気が変わる。
"何か"が体の中に入ってくるのを感じる。
それはアリスの体から俺の腕に流れ込んでくる。
今までに感じたことのない感覚。
……ただ不快感はなく優しく温かいもの。
「……感じた? お兄さん。これが"魔力"だよ」
「……あー、なんていうか、包み込まれてるというか、心安らぐ感じだな」
俺はすごくリラックスしていた。
同時に懐かしさを感じていた。
「この感覚を忘れずに毎日訓練してれば時期に魔弾ができるようになるよ!」
「ありがとうアリス」
おれは腕にしがみついているアリスの頭を撫でた。
「っ!?」
「あぁ、すまん。つい癖でな。よく妹にやるんだ……嫌だったか?」
「……いや、嬉しい……」
俺は妹にするように頭を撫でた。
「こんな日がずっと続けばいいのに……」
ボソッとそんな声が聞こえた。
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