第29話 クソヤロー
ダップに吹き飛ばされ、あわやハンターの首を切り落とすところだった。
「やはり、魔狼は利口だな。」
ハンターの肩には鳥が乗っていた。
……
鳥は羽を羽ばたかせると矢のようなものが飛んでくる。
俺はダップに咥えられる形でハンターとの距離を取る。
「これは我が神の守護鳥!!幾多のピンチを助けてくれた我が相棒!!」
俺はダップの背に跨がるが、倒すことは出来なくなった。もう反動で体が痛むのだ。これ以上の戦闘は確実に死を意味するのだろう。
「ハンターさん……俺は見ての通り人間ですよ。」
こいつは俺をゴブリンと魔狼と思っているから争っているのだから、戦う必要は本来はないのだ。
「ほら、ダップも警戒を解くんだ」
俺は心にもないセリフを吐きながらも、ダップの頭を撫でる。
ハンターは警戒しているのがわかる。
一瞬でもいい油断してくれ。
ハンターのズボンの縁から何か出てきた。
「ウンコ……」
俺は思わず口にしてしまった。
紛れもなくウンコ、人糞であった。
鼻に付く匂いの間違えようのないクソに目を奪われたとたんにハンターは攻めて来たのだ。
俺というよりはダップは即座に距離をとり攻撃を回避した。
「臭い玉も効かないとはな!!」
え?臭い玉……ウンコだよね!?
絶対ウンコだよね?
「なんだ?貴様さては臭い玉を知らんな?獣の糞尿を加工して鼻の効く魔獣にはこれが効くはずなんだ!!」
加工前だよね!?
獣糞じゃなくて、人糞だよね!?
だが、たしかにダップも心無しか距離をとり、戦うことを嫌がってる気がする。
俺は反動で上手く動けるようになるには暫くかかる。つまりはダップがハンターと鳥を相手にしなくてはならないのだ。
ダップ vs ハンター&鳥
ここで俺は決断をした。
「ダップ。逃げるぞ。」
異世界転生したけど、たぶん俺だけハードモード 工藤 隆久 @kudo-takahisa
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