第28話 ダップとの旅

ダップの背中に乗り俺はサイの元へと向かった。

ダップは優秀だ。

成長したダップの乗り心地は悪くない。


俺の目的は明確だ。

サイの店まで行ってアサシンナイフの代金を踏み倒す。

その上で更なる武器を手に入れる。

……

可能なのか?

俺は無一文だ。

しばらくはタダ働きでもしながら借金返済になるのか……

俺が極悪人なら持ち逃げするだろうにな……


突然、ダップが身構えた。

「おいおい、ダップ。またウンコか?」

だが、いつもとは明らかに違う。

俺は急に動くダップの毛を握り締めた。

ダップが身構えていた場所には矢が数本残っていた。


マジかよ。野盗か?


敵は見えない。緊張が走る。

アサシンナイフを即座に構え、俺は敵を探す。

アサシンナイフは使用者の潜在能力を限界まで引き上げる。そのせいか握れば、何となくだが、周囲を把握できる。茂みの動きと人の匂いだ。


「ダッブ、俺が行く。」

警戒体制のダップを置き去りにし、俺は動いた茂みへと滑り込み、背後を取る。

隠れていた奴の背に飛びかかった。


とは言え子供の俺が飛び乗ったところで押さえ込むことは出来ない。首もとにナイフを突き立ててこう言うしかないのだ。

「動くな。手を上げろ。」


「くっ、まさか。魔狼かと思ったが、ゴブリンライダーだったか。」

なに言っているんだ、こいつ?俺をゴブリンだと思っているのか?

「貴様何者だ?なぜ俺とダップを襲った?」

「ダップ?あの魔狼の名前か?知れたこと、最近は魔王の影響でここら辺では見かけない魔物が多く見られていてな。俺はハンターとして狩りに来たんだ。」

ハンター?ミオたちの格好はどちらかと言えば和風っぽかったがこいつは胸当てや角の生えた兜なんかはどちらかと言えば欧州のバイキングのような格好に思えた。

「俺は人間だ。」

「それはすまなかった。間違えたんだ。許してくれ。」

「お前一人か?」

「あぁ、そうだ。俺だけだ。」

その男は弓矢を手にしていなかった。腰に刀をつけているだけだ。

「いや、お前は信用ならないな。弓矢を持っていない。仲間がいるんだろ!!」

ダップはまだ警戒していたのが茂みの中からもわかった

「先程の矢は私の力だ。安心しろ私だけだ。」

こいつの言っていることは真実かわからない。

間違いなら傷付けずに無力化したいものだが...

なんとかして、こいむこいつの動きともう一人の動きを止める方法はないものか?

ダップはまだ警戒している。

ダップを使うってなんとかできないか?

ダップ...ダップ...ダップ...ダップン……ダッ

「ダップ…」ついボソっと口にしてしまった。

「脱糞しろだと!!!」

ん?俺はそんなことに言ってないぞ!

「ウンコすれば信じるんだな!!」

一瞬、場が凍った。

「何を言ってやがるんだ。」

「クソ垂れなんてただの足手まといと言うことか!!」

「意味わかんねーよ」

まさかこいつマジで脱糞するつもりか!?

俺は首の皮一枚傷を付ける。

自称ハンターは腰に手を掛けようとした。

「てめー!!なにやってやがる。刀に手を掛けるつもりか!?」

「ズボンに手を掛けているんだよ!!!」

「誰が許可したんだ?危ない奴め!!」

なるほどこいつは俺を油断させて抜刀を狙っていたのか

「おい本気か?お前本当に人間か?」

ハンターからすれば俺は見た目

「あぁ、人間だ。人間だからお前の行動は手に取るようにわかるぞ。」

「勘弁してくれ...」

「仕方ない!、一つウンコで助かるなら安いものだからな!!」



そいつが力んだ、途端にダップが俺たちに飛びかかった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る