第25話 反動
「両腕骨折。足は筋肉断裂でしょうね。」
サイさんが俺の元に駆けつけてくれた。
「治るんですか?」
俺はサイさんに頼るしかなかった。
「まぁ、このくらいならすぐですよ。ほらこれを食べてください。」
渡された木の実を食べた。身体が少し楽になった気がする。
さすがファンタジー回復アイテムまであるとは俺の今までの生活はなんだったのだろうと思ってしまう。
「おそらく数日は身体が重く感じるでしょうが、すぐによくなりますよ。」
サイさん……
どこぞのバカ女や鬼畜神なんかよりも全然役に立つ。
そう思うと俺の意識はなくなったのだった。
俺は翌朝には目が覚めていた。
身体はまだ動かない。
回復薬が効いても疲れはとれていないのだろう。
痛みよりも倦怠感が大きいのだ。
サイさんは村へは入れないことをミツハが決めたらしい。
「神殺し」と呼ばれる武器を持っている可能性を考えてのことらしい。
「神殺し」を使えば神とは言えど殺せるということだろう。
だが、そこは問題ではない。
「テンくん。君はあくまでもミツハ様のご厚意で村への滞在を許可しているのです。あのような訳のわからない輩の手引きはやめて下さい!!」
ミオはご立腹だ。
「その訳のわからない輩を助けたのは俺じゃなくて、ミオだからな!!」
「必要以上の接点を持つなと言っているんです。なんですかあの武器や薬は。明らかにこの辺りでは手に入らないものばかりです。」
「そういえば、あのアサシンナイフはどこにいったんだ?」
「あれなら、ミツハ様が一応確認するとのことでしたよ。それよりも、その代金をあのサイとか言う男は私たちに請求してきたんですからね!!」
ややキレ気味で俺に言われても困るな...
「高いの?」
だが、選ばれし俺の武器なのだから仕方ないだろう。
「とても高いので...テン君がミツハ様を信仰してない他宗派と伝えたら、身元を引き渡さないと他の村へ私たちに商品を踏み倒されたと言いふらすなんて言うものですから、テン君の治癒が終わったら店舗の方へ謝りに行きます。支払いの話はその時にしましょう。」
そういうと、ミオは地図を渡してきた。
「わかった。でも俺一人で行くからいいぞ。」
「何をバカなことを言っているんですか。キミ一人でどうやっていくと言うんですか。」
ミオは呆れていたが俺には秘策があったのだ。
「あのナイフは使ってはダメですよ。また今みたいになっちゃいますからね。」
俺は大人しく身体の回復を待った。
それが今の俺が出来る唯一のことだったからだ。
俺は不敵な笑みを浮かべていた。
数日後、影で気味が悪いと言う声が聞こえて涙がでてきた。
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