第21話 俺の名は
俺はミオの尻叩きが怖く、日夜修行に励んでいた。
素振り、筋トレ、ダップやオカンの散歩。ミオや男衆たちとの見張りと巡回、魔王の手先の討伐などもやっていた。
毎日がハードワークなのだ。
魔王の侵略は近くの村や町に潜入し、少しずつ人を食い殺すというものだった。
残念ながら魔王はどこにいるのかわからない。
わからないから時飛ばしなんてチートスキル持ちたちですら手を出せない。
勇者スタイルというよりハンタースタイル。
近隣の村からの依頼や目撃情報があれば魔王討伐に赴くのだった。
「テン!お前見張りもできないのか。」
「こちら異常ありません。」
俺はテンと呼ばれるようになっていた。
転生者だからテン。名付けの元はバカ女ミオ。
細かいことを気にしない彼女らしい。転生者君と呼ぶのが面倒になりいつの間にかテンと呼ばれていた。
「あれはなんだと思う?」
ミオのその言葉に俺は目を凝らす。たしかに一部の木々が僅かに揺れていた。
「人ですね。」
「テン。君はバカなのか?もっと早く気づけたはずだ。」
「よく気づきましたね」
「私は5つから見張り台に立たせてもらっていたからな。テンだって後10年もすれば私に追い付く。」
流石としか思えなかったキャリア10年以上は伊達じゃない。
ミツハ神の治めるこの村は周囲の村と異なり化け物退治や狩猟が主な収益となっていた。
だから村へ通じる道には村への客がたまに来る程度だった。
「客でしょ、どうせ。」
「違うな。金を鳴らす準備をしろ。」
たしかに少し汚いが、変ということはない。
「私が睨むに……ミツハ様の神秘の水と狙う盗賊か何かの密偵とみた。おそらくは道に沿わずに裏手を回ろうとして道を遭難でもしていたのだろう。」
男は山道を道に沿わず走って来たのか、息も絶え絶えに木々を掻き分けて、村へと通じる山道現れたのだった。
「すぐに隠れるはずだ。金を鳴らすと逃げられてしまうかもしれないな。」
男はむしろこちらに目を合わせ向かってくる。
かと思えば、男が出できた所から蜘蛛のような形の毛むくじゃらの生物が現れてきた。
体長3メートルは軽く越えているだろう。
俺は即座に警鐘を鳴らす。
カンカンカンカン
「ここにバカがいます!!誰か助けてください。俺の監督役変わってください。10年以上のキャリアがあってもただのバカです。役職解任してください。」
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