第17話 交渉
「さっきも言ったが、時飛ばしの能力は希少能力なんだ。私の信者でも男衆とミオの10人くらいだ。」
10人もチートキャラがいるだと!!!
ふざけんな。
魔王それでも倒せないってどういうことだよ。
俺は断固断る。流石に断ってもいいはずだ。
「転生者の君にはミオたち以上のスペックがあるんだよ。」
「何を根拠に……」
俺なんてただの社畜で……トラックに轢かれて……転生したら捨てられて……頑張って来たのに……モブの方がスキル強いって……
「根拠ならあるさ。転生者は転生時点で対価を頂くはずだからね。君の対価はおそらく前世の命と君の情報の一部、それ以外にも――つまりは転生した時点で君は無能力ではないのは確実なのさ。」
なるほどだからスペックだけは高いと約束された勝利がそこにあると……
俺、やっちゃう?
魔王やっちゃう?
正直言えば、そんなの知るかと言ってやりたい。
「だが断る」と突きつけたい。
それなのに、女神であるミツハは俺に深々と頭下げていた。
「君の力が必要だ。」
「わかった。だが、まずは俺を鍛えてくれ。」
俺は条件付きで了承せざる得なかった。
わからないことが多いが、神に頭を下げられたのなら仕方ない。俺はこの神に手を貸すことにした。
俺は何も出来ないことを知っている。
まして少し成長していてもまだまだ子供である。
せめて敵に遭遇しても逃げれる程度にはなれなくては魔王なんかいる世界では生きてはいけない。
「よかったよ。もし君が断ったらこの村には置けないからね。子供を見殺しなんて後味悪いからね。僕も知り合いの神たちに君のことを訪ねてみるが、あまり期待しないでくれ。事情があって天界には行きたくないんだから。」
きっと俺には断る権利などなかったのだ。
働かざるもの食うべからず。
可能なら俺の特殊能力についても調べてほしいが、まずは身体作りをしなくてはならないだろう。
身体が大きくなるまではこの神にすがるとしよう。
魔王なんている世界なら弱肉強食。力も知力も常識もない俺は武器を作らなければならないのだ。
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