第10話 女神

「ふふ。転生者とは面白い。」

女の声がした。

涙を絞り出そうとしたせいか、俺は短髪の女がいつ入ってきたのかを気付かなかった。

女の言葉はなぜか理解できた。

「どうした?ギフトすら貰ってないじゃないか。言葉すらわからないとは可哀想に……大丈夫だ。君はまだ子供だすぐに覚えられる。ステータスなんて伸び代しかない。」

明らかに異質だった。日本語もステータスのことも……赤ん坊にではなく、明らかに俺に話しかけている


感動だ。俺は今感動している。こいつは間違いない。神だ。こんなに早く出会えるとは大誤算だったが……


「何を思っているのかな???僕は心は読めないんだ。転生の女神が投棄したのかな。こんな島国に飛ばされるなんて、今度天界であったら文句を言って上げるよ。まぁ、今の僕には無理か……」

凄く優しく俺の胸を一定のリズムで叩きながら、時折指で俺をつつきながら女神は続けた。

「君を育ててた犬たちを心配してるのかな。安心しな。あの雌犬と子犬たちは生きてるよ。ただ他の犬たちは僕の信者たちが殺してしまったよ。僕の泉で水浴びを許すのは僕の信者だけさ。君と子犬君はかわいいから許して上げるけど、あの大犬はダメだ。僕の眷属にはふさわしくない。」


なんだとオトンたちはあの熊の毛皮を被った人間に殺されてしまったのか……

しかも俺のせいで……

この僕っ子女神、お前も殺してやる……


俺は顔を触る神の指に噛みつく。

「怒ったかい? でも、ルールはルールだ。転生者なら前世にもルールが何かしらあっただろ?」


だめだ。顎が疲れた。この身体に指を食いちぎるほどの力はない。俺が前世の姿ならこいつの服をひんむいてケツの穴に割りばし突っ込んで奥歯ガタガタ言わせてやるのに!!


「ミツハ神様ここへ要らしたんですか?」

「あぁ、ミオか。」

ポニーテールの女がまた入ってきた。

「神間へいなかったので、探しましたよ。せっかくの勝利の美酒です。男衆に何か激励を。」

「いや、ここは我がミツハ信教の誇る戦巫女におまかせしよう。僕はあくまでも君たちの守護神さ。」

「そういうわけにはいきません。ミツハ様のために私も犬どもの討伐へ出向いたのです。それにそちらの供物を用意しますから。」

わからん。わからん単語が多いが、とりあえずミオとかいう女が俺を見て供物と言いやがったぞ。

「なら、この子は僕が連れていくよ。全員集めろ。話をする。」

女神ミツハに抱き抱えられた俺に出きることは1つだけだった。

頭によぎるのはダップのことである。俺はあの兄弟から学んだのだ。どんなときでも諦めないこと、策を労することを!!


腹に力を入れ俺は恥もなく糞尿で女神ミツハの腕を、服を、身体を汚してやった。


これぞ、解放感!!!

いや、達成感!!!

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