第5話 雛とダップと俺
オカンの遠吠えが山々を響き渡るが見る影もなくなる。
犬は空を飛べない。
ここは異世界と言っても同じであろう。
ちなみに失禁脱糞は俺だけではない。横にいる兄弟も脱糞している。俺が先ではない。俺よりはるか先にチンサムを感じた時から横で失禁、脱糞しやがった。
その後が俺だ。
俺のほうが後からだったし、俺は恐怖によるものではない。あくまでも生理現象。お腹を鳥の握力で押さえられたことによる圧迫感で催しただけに過ぎない。
断じて横の恐怖脱糞犬とは違うのである。
俺はこれからこの兄弟をダップと名付けることにしよう。
生きていたらな。
鳥のは大きく旋回し始めた。巣に降りるのだろう。
兄弟はまたも失禁している。
よく出るな、ダップ!!
お前は三半規管が弱いんだな。俺に散らすなよ。
俺は考える。
足取りのおぼつかない子犬と、ハイハイがかろうじて出来る赤ん坊。
怪我をしてなくても、逃げ出すことは出来ない。
圧倒的にパワーが足りてない。
無理だな。これは鳥殺決定だな。
ピィピイと鳴き声が聞こえるてくると、生前見たツバメの餌やりがフラッシュバックした。
意外なことに、俺たちは擦り傷こそあるが、ほぼ無傷で巣の端に投げられたのだった。この鳥はおそらく賢いのだろう。雛は4匹。大きさは俺たちはより少し小さい。もはやこの世界の生き物の大きさがわからない。でかくね?きっと俺たちはエサではなかったのだ。
ダップは怯えている。時折声を出すが、その都度親鳥がそれよりも大きな鳴き声で雛たちの後ろから威嚇してくる。
心の折り方をわかっているようだった。
俺たちと雛の間には俺一人分程度間が空いている。
雛の動きはそんなに早くはない。首を伸ばして来たところを嘴を叩いてやると怯んでしまう。
親鳥も攻めてこない。
なるほど、親鳥は俺たちを雛たちに殺させたいようだ。
だが、なぜだ?
餌やりなら俺たちを殺してから、与えれば良い。
レベルアップがあるのではないか。
異世界転生なら必ずと言って良いほどある奴だ。
間違えない。そして、この親鳥は頭が良い。この世のルールがわかっているから手を出さないのだ。
後はもぐら叩きの要領だ。
4匹の雛の攻撃する前に目の前に手を出してやる。
それだけで怯む雛たちを相手にするのは、俺一人でも割りと出来た。
だって、手を前に出すだけだったからだ。
ダップはというと、俺の背に隠れて頑張って穴を掘ろうとしてくれている。
怖いの、ダップ???
ここ、鳥の巣だから地面は木の枝なんだよ。
砂遊びは出来ないんだよ。
そんな余裕がて出来たとき俺の頬を雛の嘴がかすめた。
とっさに顔を守ろうとすると、隙ができ4羽から一斉につつかれた。俺の細腕は一瞬で血まみれになってしまった。
そして更なる悲劇が俺を襲うのであった。
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