第4話 ビンチ


クチャクチャ、クチャクチャ

オカン、うまそうだな。

オカンは食事中のようだった。口周りが血まみれのまま近寄って来る。心配は嬉しいけど、食事の後に来ておくれ。

その行為は飯テロの最上位だぜ……


ベッ


横目で見るとオカンは俺の手が届く範囲に食べていた肉を吐き出した。

体調でも悪いのかと思った。

何度も肉を食いに戻り、俺の近くに吐き出す。

それを数度繰り返すので俺も気付けた。


この畜生、まさか俺にそれ(吐瀉物)を食えというのか!?

人間の俺にそれを食えというのか!?

家畜以下の扱いを受けろというのか……

おのれ、許さんぞ。神!!!!(怒)


だがそれを食べなければ死ぬと脳が判断できる。

俺はそれを食った。

そこには人間の尊厳などなかった。

32年の前世の記憶が今の自分をより惨めにさせた。


首が据わってからはお座りの練習。同時にハイハイの練習となった。練習といっても大したことはしない。やり方は頭でわかっている。筋肉を動かすだけだ。

初めは出来なくても2、3日練習すればお座りもハイハイも出来るようになった。

膝がむちゃくちゃ痛かった。

だが、それよりも動けることへの喜びが俺を突き動かした。

移動できる。動ける。なんて素晴らしいんだ。

これで俺はオカンの吐瀉物生活ともおさらばするつもりだった。

だが、近くに食べれる木の実などはない。

落ちているドングリでもあればとも思ったが、まだ春から夏の間であろう。実るものもなさそうだった。

探索をしよう遠くへ行こうとするとオカンが吠えてくるのだ。

そっちには行くなと言われているように思う。

関係なく行っても良いが流石に何かあったときの対応が出来ない。

俺はオカンの隙を見て一番小さい兄弟の黒犬と一緒に突き進む。小さいといっても生後1ヶ月半程度の俺とほぼ同じくらいだ。

ちょっと俺ら水飲み過ぎちゃったみたいなのでおしっこしてきまーす。


よくよく考えると赤ん坊と同じくらいの子犬、それよりもさらに大きいコーギーのオカン…大きさどうなってるの、でかくないか?

まあいい、オカンがデカイから母乳が飲めたのだ。

化け犬であっても構わん。


そう思っていると背中を捕まれ身体が中には浮く。

やれやれ、トイレは場所が違うってか?

素晴らしきは母の愛、クソほど過保護だぜ 。

甘噛みで優しく……


痛い。ちょっとオカン強すぎだぜ。

内臓飛び出ちゃうよ。

「くぅん」

ほら横で兄弟も痛いって言ってやがるぜ。

悲痛な泣き声が横から聞こえた。二匹(一匹と一人)をまとめて移動なんて、全く母ちゃんは種族関係なくせっかちだぜ。


むっちゃ風が頬を切る。

オカンの全力早いな。下を見ると地上が遠い。


ほう、あっちには煙がみえるから村があるかも。

覚えておこう。ここから降りたら村へ行くんだ。

オカン、俺は神を汚物にまみれさせ、吐瀉物を食わせないといけないんだ。ついでに恐怖失禁、クソ漏らしをさせたいと思うんだ。そろそろ下ろしておくれ。

かわいい息子たちは失禁、クソ漏らししてますよ。

オムツないから硬くて長いのが、きれいな指を汚してますよ。


違うよ、俺……

そろそろ現実を見よう……


二匹は空を飛んでいた。

正確に言えば大きな鳥に二匹まとめて捕らえられていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る