第25話 猫人、再び話す
俺とマヤが、二人揃って互いを指差しながら口をパクパクさせていると、キョトンとしていた「
「あれ、マヤのお知り合い?」
勇者イヴァーノが不思議そうな表情でマヤに問いかけると、はっと我に返ったマヤが焦った様子で話しだした。
「え、えっと、そう。前にパーティーを組んでて……兄弟みたいに過ごしてて……」
「へえ、そうなんだ。じゃあ実力には期待してもいいのかな」
マヤの発言と、それに伴って笑ったイヴァーノの言葉にぎょっとする俺だ。確かに実力には自信もついてきた頃だけれど、勇者に期待されるというのはさすがに、荷が重い。
と、これまた目を見開いてキョトンとしていたアンベルが、小さく笑いながらイヴァーノへと歩み寄った。同時にかぶっていたフードを取る。
「『
アンベルの顔と、彼女の頭で揺れる狼の三角耳を見て、イヴァーノがぱっと表情を輝かせた。同時に長い尻尾がぶんぶん振られる。こうした明るい表情は、俺と同じくらいの年齢の少年らしい。
「アンベルさん! うわぁ久しぶり、元気にしてた?」
「ああ、大きな怪我をすることも無くここまでやって来れた。マストロ渓谷での
イヴァーノと親しい様子で話すアンベルに、驚きをあらわにしながら目を見開く俺だ。なんだこの、前々から知り合いだったみたいな雰囲気。
「え……三人とも、勇者と知り合いだったのか?」
「うん、前に何度か一緒に
「イヴァーノ君も
思わず声に出して問いかけると、エルセとヒューホも何を今更という様子で答えてきた。なるほど、以前に何度も顔を合わせているなら、十分知り合いだ。
それにしても、勇者パーティーとも交流があったとは、よくよく「
と、「
「それにしても、ビト君。そこの彼女が、かのマヤ・ベルリンギエーリと、そういうことなんだね?」
彼のその言葉に、小さく言葉に詰まる。
マヤのことは、これまで半月一緒に冒険してきた中で、何度も三人には話してきた。どんな人物で、どんな職業で、どんな戦い方をするのか、など。そのマヤと、こうして顔を合わせる機会ができたわけだ。
「……ああ、そうだ」
俺が重々しくそう言うと、こちらの視線に気がついたマヤが駆け寄ってきた。そしてヒューホとエルセ、さらにはアンベルへとぺこりと頭を下げる。
「え、えっと、ビトのお仲間の皆さんだよね? 初めまして、半月前から『
マヤの言葉に、笑顔を見せながら頭を下げる三人だ。こうして初めて顔を合わせたのだから、あいさつは重要だ。
「お初にお目にかかる。『
「うん、よく知っています」
アンベルの言葉に、こくりとうなずいて笑うマヤだ。確かに俺は、今さら紹介される必要などありはしない。
しかし、しかしだ。マヤが「
「確かに俺は、『
「ね。あたしも驚いたのよ。まさか『
俺が半月前のことを思い出しながらぼやくと、マヤもそれに同調しながらうなずいた。半月という短い期間の間に、なんだかんだ活躍の場を得られているらしい。その点は本当に良かった。やはりマヤは出来るやつだったのだ。
イヴァーノがこちらに視線を向けつつにっこりと笑って話す。
「ちょうど僕たちも、優秀な
そう話しながら、マヤに笑いかけるイヴァーノだ。彼も
そして「
「ところでビト、ザンテデスキを発つ時にちょうど『
「あー……実はな……」
その言葉に、視線をそらしながら先日のノールチェと「
卵を巣から盗んだこと、激怒したノールチェに三人が殺されたこと、逃げてくるところに偶然居合わせて、彼らを助けたこと。
その話を、俺やアンベルが代わる代わるしていくと、「
「なるほど……」
「そんなことがあったなんて……」
カミロが言葉を漏らすと、マヤが信じられないと言いたげに両手を組んだ。そしてゆるゆると頭を振りながら、アンベルが言葉を吐き出す。
「まあ、『
「分かるー。時々冒険者ギルドの懲罰対象者リストに上がってたもんね」
エルセも納得したような表情で、後頭部で手を組んだ。そう言えば確かに、「
イヴァーノが小さく首を傾げながらマヤに声をかける。
「確かマヤも、前に『
「う、うん……正確には逃げた後に、なんだけど」
彼の言葉にうなずきながら、少々視線をそらしたマヤだ。やはりと言うか、あの夜のことはマヤにとってもいい思い出では無いのだろう。
と、重い空気を振り払うようにマヤが俺の手を取った。そして小さく微笑みながら声をかけてくる。
「というか、無事にパーティーを見つけられたことは良かったけれど、ビトは大丈夫? あたしと離れるの初めてだったし、泣いたりしてない?」
「ばっ、お前、俺を何だと思ってるんだよ!?」
だが、そこで俺に投げかけられた言葉に、俺は頭から三角耳を出す羽目になった。尻尾が出たのも自分で分かる。今この時にそんな問いかけを投げてくることもないだろうに。
俺が泣いてないか、ということを聞いて、エルセもヒューホもいたずらっぽい笑みを浮かべた。にやにやしながら俺を小突いてくる。
「なーにビト、あんたそんなに泣き虫だったの?」
「これは意外だ、僕たちと合流してからというもの、一度も涙を見せたことなどなかったビト君がねぇ」
「エ、エルセ、ヒューホも、やめろよ! やめろって!」
俺をからかってくる二人に文句を言うも、動揺のせいでますます人化転身が解けていってしまう。そうしてどんどん
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