第7話 猫人、悩む
翌朝。一眠りしてから「
「……」
沈鬱な表情のままで皆について歩く俺に、前方を行くエルセとヒューホが振り返って言う。
「ねービト、昨日アンベルから言われたこと、まだ悩んでるの?」
「決定権は君にある。深く考える必要はないんだ」
二人が話すことと言えば、当然「
魅力的だとは思う。Sランクパーティーという環境、所属者全員が魔物という状況。しかし、だからこそその魅力的な環境が俺を悩ませる。
「いや……いい申し出だとは思っているんだ。俺も、自分の力を存分に振るえるだろうし。だけど、レベル差があまりにも……」
そう、レベル差の問題は大きい。俺の今のレベルは29、アンベルたちの三桁のレベルからしたら、開きがあるなんてものではない。
しかし、皆はそんなことなど気にすることでもない、という風に話してくる。
「それについては昨夜に言っただろう。人間と魔物ではレベルの上がり方が違う、私たちと同じ水準になることを私たちも求めないと。まあ、冒険者ランクはB級なりA級なりに、上げてもらわんとならんがな」
「結局、レベルを上げろって言うのと同じじゃないか……」
実際、今も気楽な様子で話してくるアンベルに、俺はぼやくように言った。
B級に上がるために必要なレベル、というのもある。それを満たすためには、結局俺自身のレベルを上げないとならない。三人についていくためにはレベルを上げることがどうしても急務になる。
レベル差を気にしないとは言われても、ランクを上げるためにレベルを上げないといけない。必然、焦る。しかしアンベルは俺の焦りなど気にも留めない。
「焦るな、焦るな。私たちと一緒に行動していれば、自然と上がっていくよ……ああ、見えたな」
そう言いながら、アンベルが視線を前方に向ける、そこには二組のパーティーが集まって、作戦会議をしていた。そこに、リーダーであるアンベルがまず加わっていく。
「Sランクパーティー『
「アンベル、待っていたぞ……ん、ビト?
「それに、いつもそばに付いている姉ちゃんはどうした。一緒じゃないのか?」
と、先んじて到着して作戦会議に加わっていた冒険者たちが、俺の顔を見て不思議そうな顔をした。見れば、「
何も言えずに俺が立ちすくんでいると、アンベルが俺の肩に手を置きながら言う。
「……」
「
アンベルの言葉に、その場の冒険者たちがしばし押し黙る。しかし程なくして、俺と何度も顔を合わせたことのある「
「まあ、いいだろ。C級だとしても、人数は多いに越したことはない」
「それに、ビトの魔法でもやつを足止めするくらいは出来るだろ。鍛えている分、第一位階でも威力はあるからな」
次いで、「
確かに俺は、ずっと訓練を積んできた。第一位階の魔法しか使えないなりに、動けるように力をつけてきたはずだ。それをアンブロシーニ帝国所属の他のパーティーの面々も、よく分かっている、と思いたい。
そして俺が真剣な表情になったところで、アンベルがぽんと手を叩く。
「よし。それでは作戦の確認をしたい。既に案があるようであればうかがいたいが、どうだ?」
アンベルの言葉に、その場の冒険者が視線を彼女に集める。そしてオットリーノがうなずきながら口を開いた。
「ああ、イーターライオンの居場所はつかんでいる。あそこの崖に空いた
「まずは、
次いでオルフェオも言葉を継いで説明を行った。
遠方から連続して攻撃のできる
前衛の後ろから遠距離攻撃役の
理論だった説明だ。作戦も非常に理にかなっている。これなら、突発事象がない限りは作戦通りに進むだろう。
アンベルもそこは同意見のようで、満足したようにうなずいた。
「いいや、問題ない。その作戦通りに動かせてもらおう。ビト、君もいいな?」
「あ……ああ」
アンベルが視線をこちらに向ける。それに対して俺はうなずくより他にない。
これ以上無いくらいに理にかなった作戦に、C級の俺が口を挟めるわけがない。何しろ周りにいるのは揃ってA級とかS級とかの冒険者なのだ。
と、アンベルが俺の方に近寄ってくる。そして口元を俺の耳に寄せながら、ささやくように言った。
「イーターライオンが外に出るまではいつも通り、第一位階を連射する形でやってくれ。出てきたら、派手にやっていい」
その言葉に、はっと目を見開く俺だ。
そう言われたら、従うしか無い。そうでなくても、力を発揮する機会を認めてくれたのだ。その機会を無下にする訳にはいかない。
「……わかった」
彼女の言葉にうなずく俺だ。それを見て、オルフェオがさっと手を動かす。
「よし、行こう。洞穴はここからしばらく先だ」
オルフェオの言葉に従い、冒険者たちが動き出す。目指すは、イーターライオンがいるというしばらく先の洞穴だ。
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