第32話 約束は大切な人を守りたい時だけ破れ6

「待っていたわ…!シン!」




俺がクラスに着くなりそう俺に大声で言い放ったのはサンドラ・ユーロプスその人だった。




クラスの目線は全部こちらに向き、さっきまであったであろうクラスメートの友達間の談話も一気に聞こえなくなった。




俺は全クラスメートの注目を集めながらこう言った。




「ええっと、なんで待っていたんだ?」




すると彼女は俺の目前に一枚の紙を突き出した。




見ると新部申請書とある。




これだけでは要領を得なかった俺はこう聞き返した。




「つまり、どういう意味だ?」


「はぁ!?ここまでしてもまだわからないの!?あなた本当に主席!?」


いや逆にこれだけで分かったやつのほうがすごい。


「まあいいわ。今から懇切丁寧に説明してあげる。」


「ああ、頼むよ」


「まず、この書類の意味は分かるわよね?」


「ああ、新部を創設するんだろ?」


「そ、でその創設には5人必要なの。だからあんたにその一人になってもらうプラス他の人を連れてきてもらうの。もちろん拒否権はないわよ」


はいはいそうですか。


俺の扱いはそんな感じですか。


「それは分かったんだがなんで新しい部活なんて作るんだ?」


「それはもちろん、この学校に私が入部するに見合う部活がなかったからよ!」


ここで俺は大いに後悔した。




しまった!あの時無理にでもテニス部に入れておけばよかった!











俺は渋々部員を集めることにした。




まずエリック、エリックはそもそも俺と同じ目的、勇者サンドラを統御するためにこの星に生まれてきたので彼女に接触する場面が増えるのは喜ばしいことだと即断で入ってくれた。




次に蘭、蘭は目的こそないと思うが入ることになった。




まああいつは無表情だが聖母的な優しさもどこか兼ね備えているから人の頼みは無碍にはできない性格なんだろう。




そして集める部員はあと一人となった。




しかしあと一人は最後にして最大の壁であった。




なぜなら俺の交友関係が、俺の誘いに乗ってくれそうな人がもういなくなったからである。




俺は最後の一人をどうするか考えながら、いわば今の状態ではどうしようもないことを考えながらふらふらと一学年の校舎を歩いていると


「あの、何か困りごとですか?」


と俺に話しかけてくる女がいた。




俺はその声につられて声の主のほうを見ると、何やら見覚えのある顔だった。




「あれ?えっと……シン……さん?」




女のほうはどうやら俺の名前を知っているようだった。




まあそれも無理もないだろう。




俺は入学式のあいさつの時に全校生徒から顔を見られていたんだしな。




しかしなんなんだろう、この既視感は。




その答えは俺が悩まずとも彼女の方から解決してくれた。




「私です!エマです!痴漢から助けていただいた!」




痴漢?ああ、確かにそんなことがあったな。




あれは確かサンドラとも初めて会った場所で確かその場にはこんな感じの女もいたような……




それでやっと鮮明に思い出した。


「ああ、エマさんですか。久しぶりです。元気にしていましたか?」


「はい!あれ以降特にこれといった事件はなく元気です!で、お悩みのようでしたがどうかなさったんですか?」


「ああ、それなんですが…」




そして俺は彼女に事の経緯を話した。




「ふむふむ、なるほど。私でよければ部員になりますが。」


「本当ですか!ありがとうございます!」


こうして俺は3人目の、俺含めて4人目の部員を獲得したのだった。

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