第29話 約束は大切な人を守りたい時だけ破れ3

「そういう経緯でこうなっているってわけですか」


「おう、すまんな、エリック。いや、お前が強引に決めたことだし全然すまんとは思っていないが」


「いえいえ、それは別にいいんですよ。いや、そもそも二人の約束なんで少しは申し訳なく思っていてほしいんですが……にしてもかわいいじゃないですか。彼女。」


俺の耳元で俺にしか聞こえない声でエリックは言う。


「かわいい?まあ確かにそうだが、お前、ひとにそんな色目使うやつだったのか?」


「いえいえ、そういう意味のかわいいじゃなくて、だって彼女、蘭さんはシンさんが部活動見学会に行くというまでは行く気はなかったんでしょう?かわいいじゃないですか。」


「ん?それとどこがかわいいと結びつくんだ?」


「ほぉ、いやいや、あなたもはなかなか罪な男だ。」


正直言ってエリックが何を言っているのかわからなかった。











最初にテニス部から回ることにした。




見ている限りそこにいるやつらはガチガチにやっているわけではなく、運動としてやっているだけだった。




俺はこういう気楽なやつが好きだ。




「この部活、結構よくないか」と言おうと二人を振り向くと




「鋭敏ですね。」


「…鋭敏。」


と二人は奥を見ながら口を合わせて言う。


俺もその視線につられて奥を見てみると




  シュッ!パン!シュッ!パン!シュッ!




そこにはものすごいスピードの球を打つ人物がいた。




「フォアのあのインパクト直前の完全に弛緩した状態、腕の遠心力を最大限たまに伝えていますね…ただものではありませんね。」


「…バックもすごい。ただでさえ両手だから腰の回転を伝えづらいのに完ぺきと言ってもいい。」


「ふむ、なるほど、確かにバックも素晴らしい。」


俺には何が何だかわからないんだが、どうやら二人の話を聞く限り、すごいらしい。




すると、その奥の人物は俺たちに気づいたのか、練習を一時中断してこちらに歩み寄ってきた。


「やあ、こんにちは。君たちは新入生かな?俺は部長のアレクサンドラ・アマデウス。アレクって呼んでくれ。」


「こんにちは、アレク先輩。素晴らしいフォームですね。」


「お、僕のフォームに目を付けるとは見る目があるね。どうだい、試しに打ってみないかい?」


どうやら二人はまんざらでもない様子らしい。


「よし、じゃあこっちへどうぞ。」










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