第28話 約束は大切な人を守りたい時だけ破れ2
「いやぁ、しかしびっくりしましたよ。「私に見とれているせいでけがされたら私も悲しいからね!」なんて一瞬僕って無意識にサンドラさんをストーカーしていたのかなぁと疑いましたもん。」
エリックは俺からの弁明を聞いて言う。
エリックとは俺と同じくサンドラ、この世界の勇者の統御を行おうとする者だ。
こいつとは昨日ひと悶着あったが、仲良くさせてもらっている。
「俺もあんなになるとは思わなかったんだ」
「ハハハ、でもシンさんって結構サンドラさんと仲いいんですね。よかったです」
「んー、ただ話すってだけでそこまで仲がいいわけではないんだけどなぁ。それに昨日今日の話だろう」
「いえいえ、こんな早い時期から話せているのは仲がいい証拠ですよ。案外この調子でいけばいつかはサンドラさんから好きになられたりするかもですね。」
「おいおい、よしてくれよそんなこと。もしそんなになったら俺はあんな激しい女と付き合わなくちゃいけないだろうが」
「ハハハ!断るってことを考えないあたり、やっぱりシンさんは優しいんですね」
「…あー!うるさい!」
「ハハハハハ!」
実技科目が終わった後の男子更衣室で俺とエリックはそんなことを話すのだった。
いろいろ授業が終わり、へとへとになった俺は放課後になったクラスをそろそろ帰ろうとしていた。
そんな時、エリックが俺に近づいてきてこんなことを言った。
「今日の部活動見学会、一緒に回りませんか?」
ん?部活動見学会?ああ、そういえばそんなものもあったな。
北コルロ高校にも部活というものはある。
今日はそれを見て回る、否、見て回れる日なのである。
いや、しかしなんだ。
俺にはこれっぽっちも部活動に参加するつもりはないんだが。
「ああ、俺部活動に参加するつもりないから遠慮しとくわ。」
「そんな悲しいこと言わないでくださいよ。あくまでただ見て回るだけなんですから。それにほら、魔王部なんてものもありますよ」
そういうとエリックはいやらしい笑顔でにやつく。
そんなこと言われてもいかないもんはいかないからな。
しかし、エリックは俺が行くというまで逃がしてくれそうにはなく俺は泣く泣く部活動見学会に行くことになった。
蘭とは一緒に帰る約束をしていたのでこのことを伝えなくてはならん。
たぶん蘭は昨日と同じ場所で待っているはずだ。
「よ、蘭。えっと、ちょっと急用が入ったから一緒に帰れなくなった。悪いが先に帰っててくれ。」
「…急用って何。」
「実はな、俺のクラスにエリックってやつがいるんだが、そいつが俺と一緒に部活動見学に行くって聞かなくって。悪い!先に帰っててくれ!」
「…部活動見学会……私も行っちゃだめ?」
「ん?ああ、まあ、かまわないと思うが。」
「…じゃあ、私も行く。」
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