番外編その3 1年後~サミュエルからのサプライズ~ 俯瞰視点(4)
「ごめんね、ヴィクトリア。このサプライズをしたくって、ずっと内緒にしていた――記念日は明日だと、思い込むようにしていたんだ」
深く頭を下げて、謝罪をしたサミュエル。彼はヴィクトリア、海面、満月、自分、そして再びヴィクトリアへと視線を移し、説明を行いました。
2人が暮らす国では、こういったイベントは男性が企画をして女性がそわそわしながら待つ、というスタイルが一般的となっています。
ですが
そのため『一般的』よりも一歩踏み込んだことを行いたいと思っており、サミュエルはそもそも、このサプライズを実現させるためにこの旅を計画していたのです。
『坊ちゃま。そろそろ、お休みになられた方がよろしいのではないでしょうか?』
『あと3つ書類を片付けておかないと、落ち着いて旅をすることができなくなるんだよ。大丈夫。……もう午前の3時を回った。俺の事は気にせず、爺やはもう休んでくれ』
この部分は、伏せていましたが――。今回のためにサミュエルは、必死になって当主の仕事を処理。そして更にはより印象的なものにするべく、ギリギリまで――今朝までずっと、サプライズの最後の内容を考えていたのでした。
「…………そう、だったのですね。サミュエル様、想ってくださりありがとうございます」
話を聞き終えたヴィクトリアは頬をピンク色に染め、サミュエルの胸にぽふりと顔を埋めます。
素敵なものを計画してくれたこと。
あの日を大切に思ってくれていること。
そして――。
自分のために、陰で頑張ってくれていたこと。
ヴィクトリアは、サミュエルの配慮に気付いていました。なのでその気持ちも『ありがとう』に込め、大好きな人に抱き付いたのです。
「サミュエル様、私は幸せ者です……っ。ずっと大切にしてくださって。あの日、出逢ってくださって。ありがとうございます……っ」
「ヴィクトリア、俺も幸せ者だよ。いつも想ってくれて。あの日、出逢ってくれて。ありがとう」
サミュエルもまたヴィクトリアの背中に腕を回し、2人は見つめ合います。そして全く同じタイミングで、ヴィクトリアとサミュエルの瞳は細まってゆき――
「…………これからもヴィクトリアを護り、幸せにしてゆく。だから今後もずっとサプライズを行っていって、毎回過去を超えるものにする。いつまでも、楽しみにしていてね」
「はい……っ。楽しみにしています……っ。ずっとずっと、楽しみにさせていただきます……っ。…………いつまでも大好きです、サミュエル様……!」
――2人は、キス。
ヴィクトリアとサミュエルは満月の光と海に抱かれながら、唇を重ね合ったのでした――。
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