番外編その3 1年後~サミュエルからのサプライズ~ 俯瞰視点(3)

「これも、現地の方から密かに仕入れていた情報なんだ。地元の人々は見飽きているものらしいけど、俺達はそうではないからね。今夜はちょうど#条件が整っていたから__満月だから__#、絶対に来ようと思っていたんだ」


 感嘆の息を吐き、自然の神秘に見惚れるヴィクトリア。その隣ではそんな最愛の人に見惚れながら、サミュエルの口元が緩みました。


「恐らく気に入ってくれるとは思っていたけれど、それは100%ではない。実を言うと内心緊張していて、その表情を見られてホッとしているよ」

「一生忘れることがないくらい、素敵な景色です……っ。それをサミュエル様と見ることができて、私は幸せです」

「……そっか、俺も幸せだよ。…………記念日のサプライズが成功してよかった」

「??? 記念日? 今日は、何かの日でしたっけ……?」


 サプライズは分かるけど、記念日が分からない。何なのかしら?

 そう考えていると、隣からは微苦笑が返ってきて――。予想外の言葉も、返ってきました。


「うん、今日は大切な日だよ。なにせ2年前、俺達が出逢った日なのだからね」

「………………え? えっ……っ!?」


 それを聞くやヴィクトリアはキョトンとなり、やがて何度も両目を瞬かせます。

 私達が出逢った日は5月21日で、今日は5月20日――。それは明日のはず――。だけどあのサミュエル様が間違えるはずない――。どうなっているの――?


「あれ……? ぇ……? 今日は確かに、5月20日ですよね……? 20の次が21なので、21日は明日……。間違いなく、明日です……。なのに、記念日は今日……?」


 一日違いのため、ヴィクトリアは大きく混乱中。サミュエルの顔を見つめたまま大量のハテナマークを点灯させ、そうしていると――。またしても、予想外の言葉がやって来ました。


「ヴィクトリア。今日で合っているんだよ。俺達が暮らす国とこの国では、時差があるからね」

「…………時差……。ぁっ! そうですっ、そうでした……っ!」


 国を発って3日が過ぎていること。サミュエルが、時差に触れないようにしていたこと。そういった理由ですっかり時間に関する問題が抜け落ちており、ヴィクトリアは胸の前でポンと手を合わせました。


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