番外編その3 1年後~サミュエルからのサプライズ~ 俯瞰視点(1)
「ヴィクトリア。これから、一緒に出掛けはくれないかな?」
新鮮な魚介類を使ったメニューとオーシャンビューを売りとしているレストランで、2人仲良く食事をした直後のことでした。一足先に椅子から立ち上がったサミュエルは、軽く膝を曲げ、紳士然とした動作で右手を伸ばしてきました。
「……え? これから、ですか……? どちらに行かれるおつもりですか……?」
現在は午後9時半過ぎで、ここは異国の高級ホテルの中。2人は
お互いに初めて訪れる国にいて、こんな夜分から外出をする。その目的が分からず、ヴィクトリアはこくりと首を傾げました。
「ごめんね、それは内緒なんだ。君の時間をもらっても、構わないかな?」
「もちろんです。サミュエル様と過ごせるのでしたら、どこでもお供しますよ」
「ありがとう、ヴィクトリア。では、こちらへどうぞ」
ヴィクトリアが手を重ねると品よく口元を緩め、ファリュスト家の馬車へとエスコート。御者や護衛にはすでに行き先を伝えているらしく、2人を乗せた馬車はすぐに動き出しました。
「目的地までは、2時間程度かかるんだ。その間に、明日の予定を決めようか」
「そうですね。一緒に考えましょう」
この旅は全6日となっており、明日は3日目――この国で過ごす、最後の日となっています。そのため、
「この国の西部には、地元民に愛されるラベンダー畑があるそうだよ。ヴィクトリアは、ラベンダーが好きだよね? そこに行ってみようか」
「はい、行ってみたいです。そんなところがあったのですね、全然知りませんでした」
「ホテルの関係者に――現地民の方に、あれこれ伺ったんだよ。久しぶりにできた旅行を、楽しんでもらいたかったからね」
「それと、もう一つ。その近くの街では大きな風車がシンボルになっていて、君好みの景色を臨めるらしい。風の街『ラドレス』というそうだけど、そこへも足を伸ばしてみないかい?」
「そちらも是非、見てみたいです。ただ……。私を中心にしてくださらなくていいのですよ? サミュエル様がお好きな場所も、入れましょう」
「気にかけてくれてありがとう、ヴィクトリア。でもね、俺は君が楽しそうにしている姿を見ることができる場所が、行きたい場所なんだ。なのでそれは全部、俺が好きな場所でもあるんだよ」
こういったやり取りをしながら次の日の予定を決めてゆき、ちょうど、スケジュールが完成した頃でした。目的に到着し、2人を乗せた馬車は滑らかに停止したのでした。
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