番外編その1 運命の人って(エピローグ ヴィクトリア編)ヴィクトリア視点

 私はもう、恋なんてしないと思っていた。


『ヴィクトリアと出会って、およそ1年と4か月。プロポーズをしてから、およそ7か月。君との生活はとても楽しかったし、今でも楽しいと思っている。ヴィクトリア・ノエマインは、100点満点の女の子だ』


『でもね、120点の女の子に出会ってしまったんだよ。おいで、運命の君』


『『昨日やっと自分の気持ちに気付いて、告白をしたんだ(したの)。やっとやっと、両想いって気付いたんだよ!(気付いたの~っ!)』』


 元婚約者の裏切りが、ショックだったからじゃない。2人の行動と態度に呆れ果て、異性が絡むことに興味がなくなってしまっていた。

 だから傷心なんて一切していなくって、旅行もリフレッシュが目的。2人のせいでどっと疲れた心と身体を休ませるため、隣国に出掛けた。


「お嬢様。ロンド湖という場所は、非常に景色が綺麗だそうですよ」

「そうなのね。じゃあ、そこに行ってみましょうか」


 旅を始めて、2日目。その日ロンド湖を訪れたのも、リラックスをしたかったから。

 評判通りそこはとても景色がよく、水鳥が暮らす水は透明。これまで目にしたことのない、初体験なものが広がっていて――。そんな場所ではもう一つ、初体験なことが待っていた。


「ご令嬢。こちらを落とされましたよ」


 うっかりイヤリングを落としてしまって、私は背後から声を掛けられる。そのため謝罪を行いながら振り向いて――


「「え……?」」


 ――私とその人は、見つめ合って固まる。


「お、お嬢様? どうされたのですか?」

「ぼ、坊ちゃま? どうなされたのです?」


 これは初対面。お互いに、相手のことは何も知らない。

 知っているのは、容姿と性別だけ。

 更に言うと、見た目は非常に整っているものの、タイプというわけではなかった。

 なのに――



 この人は、他の人とは違う。



 未だかつて感じたことのない、心地良さを感じた。

 だから、


「…………あの……。よろしければ、お話しをさせてはいただけないでしょうか?」

「…………喜んで……。私も、同じことを考えていました」


 私達は互いに歩み寄り、お互いを知っていく。そうすると更にその気持ちは大きくなっていって、気が付くとお互いを好きになっていた。


『紹介するよ。彼女がその人、真なる運命の人。撤回後に婚約を結ぶ相手なんだ』

『おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、ノエマイン伯爵家の次女・メリッサです』


 運命の人なんて、バカみたいと思っていた。

 でも、それは違っていた。



 運命の人は、本当にいる。



 私は改めてそれを感じながら、今日、そんな人の妻になったのだった――。

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