第11話 その後のオスカー(エピローグ オスカー編)俯瞰視点(4)
「…………………………………………。ぁ……。え……。もしか、して……」
目の前にいる男が、他国の有力者だった。ようやく真実に気付いた彼は、十数秒ほど沈黙。そうしてやっと喋れるだけの落ち着きを取り戻し、声を盛大に震わせながら前を見つめました。
「貴方様は……。御子息、で、ございます、か……? お、おと、お父様は……。当主様、で、あらせられます、か……?」
「いいや、父は前当主だ。先代は半年前に持病で隠居し、現在は俺サミュエルが当主を務めている」
「っっっ!!」
それはつまり、彼は公爵の爵位持ち。ファリュスト家を手足のように使えることを、意味します。
そのため、恐怖は何倍にも増えてしまい――。抵抗、反抗の意思などはすでになくなっており――
「もっ、もももももも申し訳ございませんでした!! よっ、よくよく考えてみれば、関係修復などっ、ごっ、言語道断でございます!! ヴぃ、ヴィクトリア――ヴィクトリアさんっ! 大変失礼いたしました!!」
全身に大量の汗を流しながらヴィクトリアへと深々と頭を下げ、
「ふぁっ、ファリュスト様っ! あっ、貴方様のおかげでっ、目が覚めましたっ!! もっ、猛省しておりますっ!! 愚行だったと、ようやく気付けましたっ!! でっ、でしゅっ、ですのでっっ! 金輪際あなた様方には近づきませんっ、皆様の視界にも入らないようにいたしますっ!! なっ、なにとぞっ!! 此度のご無礼をお許しくださいませ……っ!!」
その後、地面に額をこすり付けながら、数々の無礼を陳謝しました。
「どうか……っ。どうかぁ……っ! 寛大なご判断を…………っっっっ!!」
本来こういった脅迫行為は、大問題に発展してしまいます。それ故にオスカーは涙目になって何度も何度も額をこすり付け、温情を訴えました。
「調子に、乗っておりました……!! 今後は二度と、こんな真似は致しませんっ! 致しませんので……っ!! お許しくださいませ……っ!!」
「……俺は、こういった事への力の行使は好まない。今回は、全てを大目に見てやる」
「っっ!! あっ、ありがとうございます……!! ありがとうございますっっ……!!」
「だが――その誓いを違えた時は、一線を越える事になる。ゆめゆめ忘れるなよ?」
「はぃぃぃっ!! 肝に銘じておきます!! 生涯忘れは致しませんっ!!」
オスカーは安堵の涙を浮かべながら更に何度も頭を下げ、計24回下げたあと、逃げるようにしてこの場を去りました。
こうしてオスカーの復縁計画は大失敗に終わり、そして――。それによって、彼の今後の人生は一変することとなりました。
「ど、どこで誰の怒りを買うか分からない……っ。こ、これからはヒッソリと生きよう……っ」
あの恐怖によって彼は必要以上に他者に怯えるようになってしまい、なんと貴族籍を返還。次期当主は従弟に任せて山間部にある中古の家を買い、その後は独り人目を気にしながら静かに暮らしたのでした――。
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