第11話 その後のオスカー(エピローグ オスカー編)俯瞰視点(2)
「え……? 誰だ、あの男は……?」
所謂アポを一切取らないまま、ノエマイン邸を訪れたオスカー。門を開けてもらうべく地面に降り立った彼は、身体を震わせ棒立ちとなっていました。
オスカーの、視線の先――。邸宅の玄関前では、見知らぬ男と楽しそうにしているヴィクトリアの姿があったのです。
「家を、訪れるだなんて……っ。な、何者なんだ……!?」
肩より少し長く伸ばされた、サラサラの銀髪。細いフレームの眼鏡が似合う、知的な印象を受けるクールな顔。長身、などなど。美点を上げるとキリがない文句なしの美男子を見つめ、両目を何度も瞬かせました。
「…………ハルク……。お前はアイツを、知っているか……?」
「い、いえ、存じ上げません。どなたなのでしょう――我が主!? そっ、それはマナー違反ですよっ!?」
従者が狼狽した理由。それは突然オスカーが、「ヴィクトリアっ! 僕だよっ!!」「大切な話があって来たんだ!!」「会ってくれっ! ここを開けてくれっ!!」と叫び出したからです。
「必死になりたい気持ちは分かりますがっ、御自重くださいっつ! その行為は貴族にあるまじき――」
「おっ、気付いてくれた! 余計な男も一緒だが、ほら見ろっ! ヴィクトリアがこちら来てくれているぞ!!」
大声に気付いたヴィクトリアは隣にいた美男子に何かを伝え、揃って門へと歩き始めました。そうしてやがて2人は門の傍に着き、ヴィクトリアは門を隔てたままでカーテ・シーを行いました。
「お久しぶりですね、ルーエンスさん。本日はどういった御用事なのでしょうか?」
「うん、そうだ。そうなるのは当然だよね、ヴィクトリア。だからまずは、謝罪をさせてもらうよ」
婚約を撤回した件についてしっかりと詫びを入れ、あの出来事によって君の大切さを再認識できたと告げる――。そうすればヴィクトリアは理解をしてくれて、関係は元通りになる――。
オスカーは改めて確信し、頭を下げようとしました。ですが、
「貴方が噂の、オスカー・ルーエンス様ですね? 彼女にはもう、そのような言葉は必要ありません。そういった事が目的なのであれば、ただちにお引き取り願います」
銀髪の美男子がヴィクトリアを護るようにオスカーの間に立ち、冷たく鋭い視線を注いできました。
「っ、誰か知らないが邪魔をするなっ!! これは僕とヴィクトリアの問題なんだっ!! 無関係者は引っ込んでいてくれ!!」
「それは、出来かねます。俺は、関係者ですので」
「はぁ!? 関係者だと!? じゃあ聞くが、君はどういう関係なんだ!?」
若干声を裏返らせながら、目の前の美男子を睨みつけます。すると彼はすぐさま回答を行い、オスカーはそれによって更に唖然となったのでした。
「ヴィクトリアさんと、俺サミュエル。俺達の関係は、恋人です」
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