第9話 楽しいはずの時間は、悪い一面によって台無しとなってゆく 俯瞰視点(3)

「…………………………」

「…………………………」


 あれから、およそ2時間半後。全6品で構成される優雅で美味なランチが終わり、ジュエリーショップとブティックを回ったあとのこと。

 ブティックを出たオスカーとメリッサは、仏頂面で無言。先ほどの馬車内よりも、ギスギスしたムードとなってしまっていました。


(り、リーンさん……。我が主とノエマイン様は、どうされたのでしょうか……?)

(わたくしにも、検討がつきません……。いったい何があったのでしょう……?)


 2人はずっと傍にいましたが、言い合いは一度もなし。こういった状態に陥ってしまう出来事がなかったため、困惑していました。


(……お声をかけにくい、雰囲気ですが……。それでも……)

(この状況下では、いくしかありませんね。ハルクさんはルーエンス様に、わたくしはメリッサお嬢様に、確認をしてみま――)

「メリッサ。なぜ君は、そんなにもムスッとしているんだい? はっきり言ってごらんよ」

「オスカーこそ、ど~してそんななのかなぁ? 言いたいコトがあるなら、ちゃんと言ってよ」


 幸か不幸か。そっぽを向いていた2人は身体を向け合い、どちらも頬がひくひくしているものの――一触即発な雰囲気ではあるものの、事情を把握できるチャンスがやって来ました。

 言い合いなどは一切なかったのに、そうなってしまっている。それは一体、なんなのでしょうか?


「では、遠慮なく言わせてもらうよ。…………メリッサ。さっきは、男の人ウェイターや店員と楽しそうにお喋りをしていたね? もしかして、彼らを気に入ったのかい?』

「…………オスカーの方こそ。すっご~く女の人ウェイトレスの人や店員の人と楽しそ~にしてたよね? もしかしなくっても、あの人達をい~な~って思ってたの?」


 メリッサとオスカー。2人が苛立っていた理由は、相手の態度でした。


 ムカムカの原因は、独占欲。


 自分以外の異性と仲良くするのが面白くない。メリッサとオスカーにはそういった性質があったため、大量にストレスが溜まっていたのです。


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