第9話 楽しいはずの時間は、悪い一面によって台無しとなってゆく 俯瞰視点(1)
『我が主っ。そういえば本日は、婚約後初めてのお買い物ですね……!』
『そして同時に、お二人で行う初めての遠方への外出ですね……っ! 初めての行動で、初めて購入されるお揃いのアイテム。お嬢様とルーエンス様がどういったものをお選びになるか、今から楽しみです……!』
『我が主もノエマイン様も、大変センスがよろしいですからね……! わたしも、楽しみで仕方がありません……!!』
あの日から今日までの間にも色々な悪い発見があり、オスカーとメリッサの仲は更に微妙なものとなっていました。そのため同行しているリーンとハルクは馬車での移動中に精一杯盛り上げ、
『そ、そうだな。……メリッサ、記念すべき日を楽しもうね』
『そ、そだね。……ん。オスカー、今日は楽しも~』
そのかいあって、2人の様子もそれなりに良好。モヤモヤはありましたがオスカーもメリッサも、それを忘れて楽しもうとしていました。
(ふぅ、よかった。リーンさん、上手くいきそうですね)
(ええ、ハルクさん。メリッサお嬢様はショッピングが本当にお好きですし、ネックレスは待ち望んでいたものですからね。良い切っ掛けとなってくれますよ)
馬車から降りた2人は、メリッサ達の死角で目配せを送り合います。そうしてメリッサとオスカーと共にジュエリーショップに入り、これまでのアレコレを仲良く払拭してゆく時間が――。始まることは、ありませんでした。
「……………………チッ」
「……………………む~」
店に着いてから、1時間半後。ショップを出て、次の目的地である高級店へと――お洒落なランチを摂るべく予約したお店に向かう車内では、オスカーとメリッサはそっぽを向いてムスッとしていました。
ずっと望んでいたことをしていたはずの、2人。そんな彼らがなぜこういった様子になっているのかというと、
『メリッサ、いいデザインのものを見つけた! これにしないかいっ?』
『あ~、素敵だね~っ。でもでも~、こっちのが可愛いと思わない? ねっ、これにしよ~?』
太陽をモチーフにしたネックレスと、花をモチーフにしたネックレス。2人は全く違うデザインを気に入り、
『僕はこれが、僕らにピッタリだと思うんだ。僕のセンスを信じて欲しい』
『あたしはね、これがあたし達にピッタシだと思うの~。あたしの直感を信じよ~よ』
どちらも退かず、
『悪いが、こればかりは譲れない。これが一番だよ……!』
『違うよっ。一番はこっちのっ! あたしのにしとくべきだよっ!』
店内で、揉めに揉めてしまったから。
2人はショーケースの前で火花をバチバチと散らし、どちらも我を通そうとするため、一向に答えは出ず。メリッサとオスカーはその後1時間近くも言い争いを行い、結局購入は延期――この日は何も買わずに、店を出ていたのでした。
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