第5話 その日の夜 オスカー視点
「なるほど……。昼間の紅茶お代わりの件には、そういった理由があったのか……」
その日の夜。間隙をぬってコッソリと――主人の入浴中にメリッサの侍女が僕の部屋へとやって来て、彼女の説明によって理解をした。
『ルーエンス様、申し訳ございません……。
メリッサの趣味は、カップとソーサーの収集と紅茶。それは把握してたけれど、実態は予想以上。特に自身が淹れた紅茶には絶対的な自信を持っており、それによって時折暴走してしまうことがあるらしい。
「まさか、メリッサにそんな一面があるなんて……。知らなかった……」
『オスカーさ~ん。よかったら、あたしの紅茶を召し上がってくださいっ』
謙虚に出してくれて、僕が飲む様子を不安げに見守り、
『メリッサ。とても美味しいよ』
『やったぁ。よかった~』
美味しいと返すと、ぱぁっと笑顔の花を咲かせるメリッサ。
それらが、全てではなかったなんて……。全然、気が付かなかった……。
「これからは毎日、こうやって2人で楽しめると思っていたけれど……。こんなことになってしまうのなら、頻繁には出来ないな……」
機嫌を損ねると、正論が一切通じなくなるんだ。あぶなっかしくて、落ち着かない。楽しむことなんて、できるはずがない。
「……はぁ……。また、予想外が起きてしまったな……」
今日は昨日の分まで、和気あいあいとした時間を過ごそうと思っていたのに……。知らなかった嫌な一面を発見してしまい、昨日以上に台無しになってしまった。
「正式に婚約をして、たった2日目でこれだ……。………………僕らは本当に、上手くやっていけるのだろうか……?」
メリッサは、120点のはずなのに――。できる、そう言い切れる自信がなくなってきた――。
「……もしかして、この婚約は……。しっぱ――い、いやっ、違う、そうじゃないっ。きっと、これからは大丈夫だ」
無意識的に出てきていた言葉を飲み込み、目を瞑る。
「今日と昨日のことは、寝て忘れよう。…………明日は――明日は一日外出の用事があるから、明後日だな。明後日はきっと、メリッサと良い時間を過ごせるさ」
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