第4話 新たなモヤモヤ(オスカー編) オスカー視点(1)
「オスカー、はいど~ぞ。あたし特製アールグレイ、召し上がれ~っ」
「ありがとうメリッサ。いただくよ」
明日こそは、2人で楽しい時間を過ごせる――。そんな予想は、思っていた通りに的中となった。
彼女の提案で#午前11時ごろに紅茶を飲むこと__イレブンジズ__#を中庭で行うことになって、メリッサはカップとソーサーの収集が趣味。そのためメリッサは紅茶にも#強いこだわりがあって__精通していて__#、最愛の人の愛用品で最愛の人が淹れてくれたお茶を飲むという、贅沢なひと時が味わえるようになっているのだ。
「蒸らしの時間はちょびっと多めとか、あたしアレンジなの~。ど~かなぁ? 気に入ってくれるかなぁ?」
「……………………うん、美味しい。メリッサアレンジは格別だよ」
ベルガモットの香りが絶妙に活かされていて、舌のみならず鼻にも美味しい。流石、と絶賛する以外の選択肢が存在しない逸品だ。
「ヴィクトリアに会うために、ノエマイン邸を訪れていた時。都合が会う際に出してくれていた、美味しい美味しい紅茶。実はそれは、楽しみの一つだったんだよ」
「ぇ~、そうなんだ~っ。嬉し~っ」
「今日からはそんな素敵なものを、その気になればいつでも2人で楽しむことができる。僕も、とても嬉しいよ」
弾けるような瑞々しい笑顔に微笑みを返し、もう一口味わう。
想いがたっぷりと込められたアールグレイは、何度含んでも絶品。あっという間に完飲し、おかわりをもらった。
「本当に美味しくて、止まりそうにない。スコーンの出番は、しばらくなさそうだ」
「ぇへへぇ、ありがと~。どんどん飲んでね~」
「ああ。遠慮なく、そうさせてもらうよ」
我が家でメリッサ謹製紅茶を嗜むのは、初めてのこと。そんな要素も加わって、その後もついついお代わりをしてしまう。
だから、なのだろう――。やがて尿意を催し、トイレに行きたくなった。
「ごめん、メリッサ。少々席を離れるよ」
「は~い。だったらね~っ。その間に、新しい紅茶を淹れてくるよ~」
「ぁ、いいや、お気持ちだけもらっておくよ。もうかなり頂いたからね」
すでに、3杯も飲んでいる。今日はこのくらいにしていて、続きは後日にしよう。
「……………………。むぅ」
そういった理由で断りを入れてイスから立ち上がっていたら、正面にある頬っぺたがぷっくりと膨らんだ。
ん? どうしたんだ……?
「………………。オスカー」
「う、うん。なんだい?」
「………………オスカーは、お代わりを要らないって言った。というコトは、美味しくなかったってコト? 誉めてくれたのはウソ、お世辞だったてコト?」
彼女は唇を尖らせ、不満げに腕組みをしたのだった。
え……? ぇ……っ?
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