第3話 生まれ始める、2つのモヤモヤ 俯瞰視点(オスカーside&メリッサside)(1)

「はぁ。こんなはずではなかったのに……」


 引っ越し作業と歓迎パーティーがあった日の深夜。睡眠をとるべくベッドに入ったオスカーは、今日の出来事を振り返ってため息を吐いていました。

 彼の予定では、仲良く部屋をセッティングして2人の色で染めるようになっていました。けれどそれは半分しかできず、中途半端で終わった。そのため、心底ガッカリしていたのです。


「…………メリッサは……。どんな時でも、僕と意見がピッタリ合う子だったのにな……」


 ノエマイン邸を訪れた際には毎回お喋りをしていて、その際は一度も意見が不一致となったことはありませんでした。


『僕はね、何事も「始め」が大切だと思うんだ。メリッサはどう思う?』

『あたしも、そ~思います~っ。だって始めは、スタートですもんっ。最初をし~っかりしとかなきゃ、あとがグダグダっとなっちゃいますよねっ』


『あれれ? オスカーさん、ちょっぴりお疲れモード? どーしたんですか~?』

『もうじき行う引っ越し作業を2人でしたいって提案したら、難色を示されてね。説得するのに力を使い過ぎてしまったんだ』

『ぁ~、そうだったんですね~。も~、おねぇちゃんってばぁ。好きな人と一緒なら、何だって楽しいのにぃ。お断りするなんて勿体ないよ~』

『そうっ、そうなんだよメリッサ! 愛する2人が揃えば、どんな事だって楽しみに変わるんだっ。メリッサは分かる人だねっ!』


 どんな話題であっても、そのどれもが一緒。一度も食い違ったことはありませんでした。



 ――だから――。これまでも、これからも、ずっと一致と思っていたのに――。



 メリッサは、他人事だから呑気に答えていた時が幾度もあった――。そうとは知らず全てを知ったつもりでいたオスカーは、今日の共同作業を確信していました。期待しているが故に、そうではなかった時の落胆は大きくなる。

 そのため、早9度目となるため息を吐きました。


「…………もしかして、今後も不一致になってしまうのだろうか……? 思い描いていた日々は、実現しないのだろうか……?」


 彼は天井へと呟き、けれど、すぐに首を左右に振って否定します。


「いや、今日は偶々っ。引っ越しという名の環境の変化がメンタルに影響を及ぼしてしまい、普段と違う反応になっただけだっ。大丈夫! 明日はいつも通りで、明日こそは2人で楽しい時間を過ごせるっ。さあ次の日に備えて眠ろう!」


 まったく、僕は何を言っているんだ――。今まで一致していたのだから、これ以上不一致となるはずないじゃないか――。いやはや、僕も環境の変化を受けて弱気になってしまっていたようだ――。

 オスカーは過去の例を当てはめ、不安を払拭。期待に胸を膨らませ、瞼を閉じたのでした。


 明日、それ以降も、再び不一致が起こるとは知らずに――。

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