第2話 夢のような楽しい時間と、はじめてのモヤっと 俯瞰視点(3)

「メリッサ、次は君のお願いを何でも聞いてあげるよ。だから、一緒にやろう?」

「あのねオスカー。あたしもね、次のお願いなら何でも聞くよ? だからさ、他の人にお任せしよ?」


「ほら、もう業者の人間は帰ってしまったよ。手伝ってくれる人は、いなくなった。2人で行うしかないよ」

「下にはメリッサつきの従者リーンオスカーの従者ハルクさん、使用人の皆さんもいるよっ。手伝ってくれる人は、ちゃんといるよっ」


「オスカー、こうやってる間にドンドン時間が減ってってるっ。今日は、せっかくの初めましての日なんだもん。手伝ってもらってサクッと終わらせて、2人の時間をたのしも~よ~っ」

「この時間は、何物にも代えがたいんだよ。頼むメリッサ、どうか受け入れて欲しい」


 不一致が発生してから、すでに30分以上が経過しました。

 その間に何回もの提案がありましたが、どちらも折れません。引き続き状況は停滞しており、時間だけが刻々と進んでいました。


「お願いだ、メリッサ。一生に一度の機会。他の人の手を借りることだけは、やめて欲しい」

「…………………………」

「メリッサ。お願い、します」

「…………………………」


 そんなメリッサは我慢の限界に近づき、無言の首振りが出るようになりました。


 こ、このままではマズイ――。なんとかしないと、初日が台無しになってしまう――。


 そう感じたオスカー、ですが、どうしても2人でやりたい。そこで彼は大急ぎで思案を行い、そうして浮かんだものを伝えることにしました。


「メリッサっ。『最初の半分は僕ら2人でやって、残りは使用人達にやってもらう』。こうしようよ!」


 大急ぎで見つけたものは、折衷案。

 それでは完全とはいきませんが、台無しになるよりはマシ。オスカーはそういった思いを抱き、首を傾けました。


「これなら、バランスも良いと思うんだ。そう、思うよね?」

「………………ん、そだね。それなら、いーよ」


 少し考えて、コクリ。メリッサにも『台無しにしたくはない』という考えがあったため、無事折り合いがつくことになりました。


「ごめんよ、ありがとうメリッサ! じゃあ始めようっ」

「うんっ。つい、ムキになっちゃったよ。こちらこそ、ごめんね」


 こうして2人はお互いにペコリと頭を下げ、婚約者となって初めての共同作業を始めたのでした。

 ですが――。最初から最後まで、気持ちよく、とはいきませんでした。


((はあ……。ここから先も、2人きりでやりたかったな……))


((はぁー……。疲れた。やりたくなかったぁ、こんなコト……))


 表には出していませんでしたが、どちらもモヤモヤ。そのせいで2人共に、その後開かれた歓迎パーティーを心から楽しむことはできなかったのでした――。



 そして、その夜。

 そんな2人の自室では――。

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