第4話 ブラックアウト
少女と俺の間に間抜けな時間が流れた。
「…えっと、あなたは私を捕まえに来たのよね…?」
「いや、違うけど。…っていうか、何でそう思うの?」
少女は疑わしそうに俺をじろじろと見ていたが、急にふっと力が抜けたように笑った。
「嘘、ついてないみたいね。」
俺はコクコクと、小刻みに頷く。少女は笑顔を貼り付けたまま言った。
「早く出てってよ。」
ひいぃっ、笑顔だけどコワッ。
少女はため息を付き冷ややかな目で俺を見る。今気付いたけど、少女の瞳はグレーだった。
「無関係の人がいると結界が弱まるのよ。だから、出てって。」
「あの…どうやって?」
俺が返事をしたのと同時に大勢の足音と怒鳴り声が耳を突き刺した。
「魔女だー!!こっちにいたぞ!」
「殺せ!今度こそ逃がすな!」
「災厄の魔女に死を!!」
武器を持った軍人が続々と現れる。俺は反射的に「魔女」と呼ばれたあの少女に顔を向けた。
少女―いや、「魔女」には何も表情は浮かんでいなかった。無表情でただ、静かに立っている。
目に殺気を宿らせた軍人達は一気に飛びかからず、じりじりと「魔女」に近づいていく。俺の存在なんてこれっぽちも気にしていない。
俺は―動けなかった。
俺のせいで、俺がここにいたせいで、少女は…「魔女」は、死ぬ。
助けなくてはと思うと同時にこの状況を観客気分で見ている自分がいた。
…さっき、俺がここに来たとき、少女は死を怖がっているようには見えなかった。それに今この状況でも、少女の表情に変化は無い…
すっと、少女に視線を走らせる。
「―っ!」
少女は―うっすらと目に涙を浮かべ、寂しそうに地面を見ていた。俺は強い衝撃に見舞われる。
…だよな。死ぬのが怖くない人間なんていないよな。
それに、見つかった責任は俺にあるし。その時、軍人の一人が声をあげた。
「今だ!行けー!」
軍人達が襲い掛かる。まずいっ!
「死ぬなー!!」
俺は、我を忘れ少女に駆け寄った。少女は目を見開き半泣きの顔で俺を見る。
お願いだ、間に合ってくれ…!!
俺は軍人達よりも一瞬早く少女にたどり着くと、少女を押し倒すようにして掻き抱く。
耳元を沢山の銃声が通りすぎる。
「うっ!!」
腹部に強烈な痛みが走った。目に写るすべてのものが歪んでいく。
「…ごめんな…」
俺のせいだ。ごめんな。
俺の世界はブラックアウトした。
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