第2話 希望→絶望

 終わった…そう、終わった…


 俺は槍を前に動けずにいた。数々の思い出が走馬灯のように駆け抜ける。

 俺ももう、年貢の納め時かな。


 だけど―


 最期になってみっともなく命乞いをするのは、やめよう。

 今までの人生で格好良いなんて言われたことはないが、最期ぐらい格好良く死のうじゃないか。

 そう。毅然としていよう。

 俺は全てを諦め、目を静かに瞑った。


 ―痛いのかな。


 急に正常な感覚が目覚めた。否、目覚めてしまった。

 猛烈な恐怖が迫り上がってくる。それと同時に怒りも湧いてきた。

 なぜだ、なぜ俺はここで死ななくてはいけない?俺が一体何をしたんだ?おい、お前、出会い頭に、しかも初対面の相手に槍を向けるって失礼じゃないのか?

 ―命乞いはしないと言ったが、今、撤回する。


 俺は死にたくない!!


 胸の中で絶叫したとたんに体が熱くなった。


 「「?!」」


 俺は自身の体の変化に驚いたが、相手は俺よりもはるかに驚いていた。…なぜ?


 「あやつ、どこに行ったのだ…!」

 「はい?」


 何を言っているんだこの人は。


 「なぬ?!声は聞こえるのだが…どこだ!!」


 思わず聞き返してしまったが、相手には俺の姿が見えていないようだ。

 ……よし、逃げよう。

 俺は生きる希望を見つけ、感謝しながら取り敢えずこの場から立ち去った。相手は相変わらずキョロキョロと焦ったように俺を探している。

 よしっ、大丈夫だ!俺は生き延びる!

 意気込み、走り出したが、しばらくして足がとまる。


 …どこに行けば良いのだろうか。


 ここがどこなのかもわからない。この状況も理解できない。そもそも、なぜ俺がここに居るのかもわからない。

 ちょっと待て。これから起こり得る未来を予測してみよう。


 1.闇雲に走る→他の誰かに見つかって死ぬ。

 2.ここで立ち往生している→やっぱり見つかって死ぬ。

 3.誰かに聞く→誰に聞くの?


 …ああぁぁっっ!!!畜生っ!結局死ぬじゃねーかよ!!

 さっきみたいに姿を消せればいいのだが、既に熱は引いているので、見えている可能性が高い。

 あぁ、まじでどうしよ。

 すると、


 「おっ、わっ!」


 体が何かに引っ張られる。


 「おいおいおい、ちょっと、おい、なんだよっ、これ!」


 俺は目に見えない何かに引っ張られ、どこかに誘導されていく。

 

 「おいっ、誰だか知らんがやめろって、おいー!!」


 ギャーギャーわめいていると、何かで口を塞がれた。


 「うっ。」


 俺は抵抗するのを止め、ズルズルと引きずられて行く。


 ―どーなるんだよ、俺。


 





 


 




 





 



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