推しの通知が来てから0.3秒の間のはなし

@blanetnoir

ポコンと振動が右手に伝わる。


無意識に親指でフリップして、

ため息をついた。











私はあなたの知らせを待っている。


いつも利き手で握りしめているiPhoneが震えて鳴くのを待っているの。





あなた以外人の知らせも受け取るけれど、


本当に必要なのは、あなただけなの。





こんなこと言ってる奴は

リアルを疎かにしてそうだと思われるかもしれないけれど、

意外とちゃんと社会とは関わっているし、

人間関係も、あまり高望みしない生き方に照らせば上々なくちだと思うんだ。



毎週LINEで夜中まで雑談する友だちもいるし、

ひとり暮らししてるけど実家との関係も悪くない。

会社の気の合う同期とも時々遊ぶし、

人との付き合い方できてるんじゃないかと思ってる。




めんどくさいヤツは最初から取り掛かる気がないから、

そういう価値観で生きてる人間だと思ってほしい。

現実をちゃんと把握して、身の程を知って、

自分のキャパでちゃんと生きてるの。

それなりに冷静なアタマもってると思う。





なのに、時々。





中指でタカタカと友だちに返信を返してるとき、


ネットでなにかを検索してるとき、


あるいはアプリゲームに夢中になっているとき、





不意打ちで画面に現れる通知画面は、


条件反射でテニスボールを打ち返すように


通知をフリップで消してしまう時があって。




目の前のリアルの活動に夢中なときに、

まるで現実のように現れるあなたの通知は、





わたしを時々混乱させる。





本来の距離感を超えて、


あなたの通知だけ、


間合いが掴めないタイミングで私の視界を霞かけるように




その時私がもってた現実のタスクとか、

考えていたこと全部、

まるで風船が弾けるように

吹き飛んでしまうから、

私はあなたの動きにどうにも抗えない。







通知ひとつで目の前のリアルを消し飛ばして

しまうくらい私の頭が参ってしまわないように、

私の生き方を崩さないで乗り越えられるように、





どうにかしないと、

そろそろ限界かもしれない。




私の人生のどの局面にも、

『恋』ってやつははさみたくないから、

誰かを愛して憧れながらも

穏やかに生きれるメンタルの操り方を

自分ひとりでどうにかできるような

仙人のようになれるだろうかと思いながら、







ほら、今もまたこうして、





右手の中のiPhoneの、

画面に光る白い吹き出しが、

ニコニコとこちらを眺めている。






このコンマ3秒間の私の心の中がどうなってるのか、

あなたは当然知らないし

誰も興味ない話だし、

多分私だけじゃないし、

この世界の至るところで類似現象は起きてるんでしょ、と思いながら




親指でフリップして

青い鳥の羽ばたく姿を眺めている。

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