1.冒険者たちと小さな依頼人

GM:まず現在、皆さんが置かれている状況について説明しましょう。場所はテラスティア大陸、ザルツ地方のとある小さな町です。その街にある冒険者の店でのんびりだらだらしている……んだけど、パーティは結成済み?


ギル:まあ、その方が……楽ではあるか?


トリノ:賛成。


スージー:それで大丈夫です!


ギル:ではそれぞれ何かしらの理由で集まり、俺たちはパーティを組んだんだろう。というわけで俺はいい依頼がないか探しているぞ。……うーん。駆け出し向けは、と(きょろきょろ)。


トリノ:カウンターでコーヒーを飲みながら錬金術関係の本を読んでいる。


スージー:バッグの中にあったはずの財布を一生懸命探しています……。


GM:いきなり不幸属性が発揮されている……。


トリノ:さっき、カバンの横ポケットに入れてた(スージーの肩を叩く)。


スージー:へ、ふえっ!? ええと、あ! ありました! あの、トリノさん、ありがとうございます!!(満面の笑み)。


トリノ:別に。覚えてただけだから。


スージー:いえ、私、忘れっぽいので、本当にありがたいです。……見つかってよかったぁ。


トリノ:(そっぽを向く)


GM:そうやって思うがままに過ごしていますと、店の扉がカランコロンと開きます。「あのぅ……」


ギル:おや?


GM:緑色のワンピースを着た少女が入ってきました。しかも泥だらけ。驚いた店主がすっ飛んでいきます。「どうしたんだいお嬢ちゃん?」(わたわた)


トリノ:ん……(顔をしかめつつもじっと見ている)。


GM:店主は少女を椅子に座らせ、キッチンからホットミルクの入ったマグカップを持ってきますね。


スージー:私も手伝います! 手持ちのタオルを濡らしてこの子の足を拭いてあげます。


GM:「……ありがとう。おねぇちゃん」少女はちょっとほっとした感じの表情を浮かべる。


スージー:少女の様子はどんな感じです? 何歳ぐらい?


GM:彼女は人間の、10歳くらいの女の子です。どこか遠くから、ずっと歩き続けてきたようで、靴がとてもすり減っているのがわかります。疲労困憊といったところですね。


ギル:俺は遠目に怪我がないか確認している。疲労はさすがに治せないが……。


GM:うん。そうだね。少なくとも大きな怪我はしてなさそう。あっても小さな擦り傷かな?


トリノ:2人がなんとかするだろうと思ってまた本を読み始める。


GM:2人は優しいなぁ。あ、店主の冷たい視線がトリノに刺さりました(笑)。


トリノ:うっ……視線が痛い……(胸を押さえる)。


GM:そんな風にお世話されている女の子ですが……懐から丸まった羊皮紙を取り出します。「あの、冒険者さん! 私の村を救ってください!」(スージーをじっと見上げる)


スージー:……へ? ちょっと困っちゃいますね。


ギル:依頼人なのか、と思って静かに少女に近づく。


トリノ:とりあえず本から顔をあげてそっちのほうを見やる。


GM:店主も困惑してますね。羊皮紙を受け取って中身をさっと確認すると深く頷く。「確かにこれは、冒険者の出番だな」ぺらりと中身を見せてくれます。


一同:ふむふむ……?


 羊皮紙には蛮族におびえる村からの依頼が書かれていた。

 蛮族は村の付近で時々目撃されていたが、ここ最近になって急に家畜や農作物が盗まれるようになったこと。それと同時期に村の中を流れる川の水量が減ったこと。川の水源は洞窟の奥にあり、もしかするとそこに蛮族が住み着いてしまったかもしれないということ。


ギル:川……タイトルの温泉と関係があるのか?(首傾げ)


GM:メタ推理やめい。えー、店主が依頼書の下の方をペしぺし叩く。「つまり、だ。この嬢ちゃんの村からの依頼らしい。報酬は300ガメル。それ以上は出せないが、その代わりに村に滞在している間の費用はあちらさんが持つそうだ。……で、どうするんだ? この依頼、引き受けるのか?」(にやり)


スージー:振り返ってトリノさんとギルさんを見ます。


ギル:俺は賛成だ。俺達でもこなせそうだしな。


トリノ:……いいんじゃない? 確かに、悪くない話だと思う。


スージー:はっ、はい! じゃあ、あの、引き受けます!!(元気に挙手)


GM:うむうむ。立派な返事に店主も満足げ。少女は安心したのか泣き出してしまいました。そして店内に響くお腹の音。


一同:あっ。


GM:「すっと歩きっぱなしだったから、食べられなくて……」(あせあせ)


ギル:よく頑張ったな。少女の肩にぽん、と手を置こう。


スージー:私も頭をなでなでします!


トリノ:そんな3人の様子を見ている。


GM:店主が笑いながら、「じゃあ、まず飯だな。腹ごしらえしなきゃ、安心して話ができないもんな」


 テーブルを囲んで少女から話を聞く冒険者たち。

 ここから村まで半日ほどの距離があることが判明。今から向かうと夜になるため、いつ出発するかの相談を始める。


ギル:俺が【ナイト・ウォーカー】で暗視を付与するという手もあるが……MPがすっからかんになるな。


GM:あ、女の子はどうします? 店主曰く、預かってもいいって。


スージー:それは……本人に聞きます。 残ります? それとも一緒に行きたいですか?


GM:「……私は…………お母さんに、会いたい!」


スージー:そうですか……そういえば、お名前、教えてもらっても、いいですか?(にっこり)


GM:「アリア……」


スージー:アリアちゃんは行きたいそうです。どうします?


ギル:連れて言ってやりたいとは思うが……(トリノの方をちらり)。


トリノ:連れていきたいなら、連れてけば(ぼそり)。


GM:少女、アリアの表情がぱあっと明るくなりました。「ありがとうございます! えっと、よろしくお願いします」


ギル:ああ、よろしく頼む。月神シーンの名において、君の安全を保障しよう。


スージー:はい! アリアちゃんのことはしっかり私たちが守ってあげますからね!


トリノ:依頼人のこともなんとかするのが、俺たちの仕事。だからこそ、無理はしない方がいい。やっぱり今日は休んで、出発は明日にしよう。今から行くのは馬鹿のすること。


スージー:そ、そうですね! 安全第一、です!(わたわた)


ギル:まあ、急ぎ過ぎるのは良くないからな。


 明日の旅立ちに備えて今日は早く寝ることに。

 アリアと交流を深めつつ、夜が更けていく……。



<旅立ちの日>


GM:さて、翌朝です。お買い物するなら今のうちがオススメでーす。


スージー:お金がないです!!


トリノ:お金がない。


ギル:残金0。


GM:お前ら……。


 冒険者たちはなけなしのガメルをかき集め、魔香草を一つ買い足した。


GM:(気を取り直して)こほん。アリアに道案内されて、君たちはまっすぐ村へと向かいます。着いた村は、何やら重苦しい空気に包まれています。燃え盛るかがり火と、村を守るバリケード。村人と思わしき人間が、思い思いの武器で身を固め、不安そうな表情を浮かべ、あたりを見渡しています。


トリノ:顔をしかめながら村の様子を見渡している。


ギル:アリア、降りるか?(GMのお願いにより異貌化解除している)。


GM:ギルに背負われているアリアちゃんは頷くよ。


ギル:分かった。慎重に屈んでそっとアリアを下ろす。


GM:「ジョンソンさーん、冒険者さん連れてきたよー!」アリアちゃんは大きく手を振るね。


スージー:おーい!(つられて一緒に手を振る)。


GM:ジョンソン、と呼ばれた青年はアリアちゃんの顔をみてほっとしたみたい。「冒険者の皆さんですね。お待ちしておりました。村長がお待ちです。ささ、こちらに……」


 村長の家に案内された冒険者たち。改めて依頼を引き受ける旨を伝え、件の洞窟の位置を教えてもらう。


ギル:ふむ。森の中を1日歩く必要があるのか……保存食買ってくるのを忘れたな。


トリノ:俺も。


GM:あ、それは村長さんが出してくれますよ。村滞在中の費用は持つって話でしたからね。往復分と予備も合わせて一人3日分お渡しします。ほい。


ギル:助かる。


トリノ:ありがとう、ございます。


スージー:私はちゃんと買ってきたので受け取りません。大変そうですし、村のみなさんのために使ってください!


GM:いいね。「感謝いたします。冒険者様、どうか村をお救いください……」村長は深々と頭を下げます。


スージー:が、頑張ります!!(ぐっ)


 夜の出発は避け、村で1泊してから旅立つことになった。

 この先に何が待ち受けているのか……何がポロリしてしまうのか……ドキドキで眠れない夜を過ごす……。

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