2章 守り主の正体
①
お
ミコは王都から、太古の森に一番近い西部の街ブランスターに移ることになった。
これみよがしなほど
「―― 目的地までもう間もなくです、聖女さま」
言ったのは、同乗していたデューイである。
「すみません、フォスレターさん。お仕事で
「とんでもありません。むしろお
常に
「フォスレターさんは王太子
「お
(王さま、体調が悪いんだ)
言われてみれば、王宮の中でミコが一方的に見かけていたアンセルムはいつも
―― 「二カ月だ。二カ月で
ミコの脳内をよぎったのは、取引に応じたあと、去り際にアンセルムが
(……無理かな)
デューイのフォローがあっても、人生を急変させたばかりか無茶ぶりまでしてきた相手を好意的に見られるほど、ミコは人間ができていない。
(フォスレターさんはいい人だと思っているんだけど……)
デューイは
「聖女さま、どうやら
デューイに言われて、ミコは窓から外を見る。緑一色だった景色が、
「下宿先の家主さんは昔、文官の要職を務められていたんですよね?」
「王立図書館の館長でした。奥さまも王宮での
デューイは「ご夫妻には聖女さまの能力についてすでに告知済みです」と述べる。
「それに、『異世界から召喚された聖女』であることや、その
「ありがとうございます。ではフォスレターさんも念のため、外で『聖女さま』呼びはやめてくださいね」
「心得ております」
ミコが念
王宮でアンセルムは堂々と「聖女
『あの少女は異世界から来た聖女らしい』と、王宮ではすっかり
(外でまで、
「到着でございます」
外にいる
そこは大通りから一本奥に入った、落ち着いた
馬車が止まっている、木とレンガを用いた
「こちらがフクマルさまの下宿先です」
デューイは約束どおり、聖女さま呼びを
(あの看板、本屋さんをしているのかな?)
「いらっしゃい。遠いところをようこそ」
玄関から出てきたのは、明るい灰色の
丸眼鏡の下にはやわらかなセピアの
「ご
「そう
「それはあまりにご
「会えて光栄じゃ、
タディアスの丸眼鏡の奥にある目元のシワが深くなる。
「初めまして。ミコ・フクマルと申します」
「―― うふふ、
割って入ってきたのは、やわらかい女性の声だった。
タディアスの
「ご無沙汰しております。フクマルさま、こちらはハイアット卿夫人、モニカさまです」
「ごきげんよう」
モニカから香るさりげない甘い香りに包まれて、ミコはぽうっとなる。
「王宮の使者の方が、こんなに愛くるしいお嬢さんで
「そうじゃな」
おしどり
二人ともとても
むしろ、視線が孫を見るように
(おじいちゃん、おばあちゃんって呼びたい……)
「馬車での移動で
モニカの
「せっかくですが、私はお
「
(知らなかった)
ミコには
「すみません、フォスレターさん。わたし、全然事情を知らなくて」
「私がお話ししていなかったのですから、あなたさまになんら非はありませんよ」
ミコに
「では、私はこれで失礼
そう
ミコは改めて二人に一礼した。
「本日からお世話になります、ハイアットさま」
「名前でかまわないわ。私たちも、ミコちゃんと呼んでもいいかしら?」
「もちろんです!」
ミコが
「じゃあ、何はともあれまずはみんなで軽食にしましょうか」
「そうじゃな」
タディアスとモニカがミコを
下宿先でうまく
(あとは、本題の『守り主』との
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