第10話 テディベア大人気

「遅かった!」

 アリスの前にはあまりの衝撃に失神したママさんともう一匹。

 体長は約2メートルで、体は細長く、足がない生き物がそこにいた!!


「アグー! あなたは起きてるわよね」

「一体何を召喚したわけ? 歩きにくいし、アリスの顔も見にくいし」

「……え〜とヘビ!?」

「ヘビ? なんでヘビなの?」

「だって、アグーがエッチなこと言うからヘビなら一緒に入れないかと思って……」


『どういう理屈?』


「そんなにぼくと一緒にお風呂入るの嫌なの!?」

「別に嫌じゃないけどなんかアグー、ヤラシんだもん」

『まぁ、間違ってないけど』

「ご主人様と入りたい召喚獣の気持ちわかってよ!」

「う〜! それを言われたら何も言えない!」


『にひひ〜、これはいけるぞ!』


「じゃあ今夜一緒に入ろうか」

「本当! わーい!!」


『ふははは、勝った!! ビバ麗しきうるわしき双丘! いざ昇らん!』


「それより、どうするのよ!」

「いやいや、ヘビにしたアリスが悪いんじゃん!」

 

「お母さ〜ん、どこ〜!? あっ、お姉ちゃん」

「あ! リリー!!」

「お母さん、どこかでみ……た?」


『ハロー、リリー』ぺろぺろっと舌が出る(無意識だからね)


 みるみるうちに白目になるリリー、そして《バタン》と倒れる……(その前にアリスが支えたけどね)

「危なかった!」

「アリス、やっぱりヘビはダメだ」

「そうだね」

 というわけでクマに変化しました。

『テディベアみたいな可愛いやつね』

 しばらくして、ママさんが目を覚ました。

「だ、大丈夫ですか?」

「ひっ! ヘビは!? あぁ〜、もう居ませんよ。というかあのヘビなんですけど私の召喚獣だったんですよ」

「へぇ! アリスさんの召喚獣だったんですか?」

「ビックリさせてすいません」

「いえ、こちらこそすいません。あまりにも衝撃的だったもので!」

 その時ママさんは何かを感じていた。

〈アリスさんの後ろに何かいる? もしかして、ヘビ!!〉

 ぼくは、ママさんの前に二足歩行で迂闊にも姿を出してしまったのだ。

〈なに!? あの……子! か、可愛い!! へ? クマ? でも、足で歩いてる……〉

『ヤバ、バレた! ……うわぁ〜、めっちゃ見てる!! けど今度は大丈夫みたいだな……』

 無意識に出てしまったぼくを見たアリスが、またママさんが驚くと思い慌てて声をかける。

「あっ! この子は……この子も私の召喚獣でして」

 アリスがぼくを拾い上げ(谷間ね、谷間! ここ重要!)へ入れる。


『え? マジで! マジかーーーーーーーーーー』


『召喚獣最高!! このままこの中へ、にひひ!』

『こら、アグーやめて!』

 モジモジするアリスを見てママさんは。

〈羨ましい……私もされたい!〉

 ※ 補足

 ちなみにママさんは、そういう意味で思ったのではなく可愛らしいクマさんと戯れるたわむれる事が出来る事に対して嫉妬されています。



 二人の女性が【はぁはぁ】とタイプの違う吐息をしていた事に気付く人は、ぼくを含めて誰もいない。



 その後しばらくの後リリーが、目を覚ました。

「お母さん、ヘビが!!」

「大丈夫よリリー、あのヘビもアリスさんの召喚獣だったみたいよ」

「そうなんだ、流石にビックリだったよ。てか、この子何? ぬいぐるみ?」

 アリスの胸元でパフパフしていたぼくを見つけ、引き剥がす様に引っこ抜かれリリーの可愛い手の中に収まった。


『のぉーーーーーー!! ぼくの楽園!』


「あっ!」

 アリスの甘い吐息が聞こえたような気がした。

「リリー、その子もアリスさんの召喚獣だそうよ」

「ええー、アリスお姉ちゃんって凄いね、いっぱい召喚獣居るんだね」


『リリー、やめてぇー首が、首がと〜れ〜る〜! 足もだめー、手もダメぇ〜』


 アリスは気が気ではなかった。

 何故ならリリーがぼくの頭、手、足をいっぱい弄っているからだ。


「リリー、もう少し丁寧に丁寧に触ってあげてね」

「うん、わかった! 頭なでなで!」



『ホントにダメー、それ以上したら〜! 《ゴキ》ギョっ!』



 ぼくはいつの間にか快適空間にいた。

『はぁ〜、助かった……』

 おそらくアリスが咄嗟とっさに召喚魔法を解除したのだろう。


「あれ!? 消えちゃった!」

「多分、私の中に戻ったんだと思います」

「ええ〜、そうなの〜」

「こら、リリーわがまま言わないの」

〈もっと私も触りたかったな〉

「また、出て来ると思いますよ……。あと、お風呂って入れますか?」

「お風呂ですか、入れますよ。お客さんはアリスさんしか居ないのでご自由に使って下さい」

「えっ? もう使って良いんですか? 本当に?」

「ええ、もちろんですよその分のお金も含まれてますから」

「あ、ありがとうございます。ありがとうございます」

 その後アリスはアグーの事など忘れ本当に久しぶりのお風呂に入ったのだ。


「うわぁ〜、お風呂に入れるなんて、夢みたいです〜!」



 一方その頃、快適空間内では。

『あれ? アリスさん? いつものやつは? 何で来ないの? ぼくとお風呂は? ぼくとの約束は? アリス〜〜〜!!!』 



 そのアリスはリリーとママさんと三人でご飯を食べ、何度目かのお風呂に入り、幸せの絶頂の中布団に入り、アグーの事など忘れ休むのでした。

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