Scene4:尖塔の魔術師ギルド。

――魔術師ギルドへ舞台を移す。魔術師ギルドは、『中央迷宮街区』にある。二本の塔が目立つ建物だった。魔術師を目指す者が多く集い、迷宮から発見された魔法の品の研究や、新しい魔法を産み出さんと研究を続けている。向上心のある者達が集うギルドだった。


トリッシュ:「旅立ち亭のすぐ裏か」

プリムラ:「入ったことなかったですねー」

エックス:「ハハッ。魔術師ギルドと言っても、入ってみれば普通の人たちだよ。ポーション作りの名人はモナと言う名前さ」

――受付を顔パスするエックスに付いていき、石造りの細い廊下の突き当り、黴臭い扉だった。扉の奥から返事がある。

エックス:「入るよモナ」

モナ:「なんじゃ、ワシは忙しいんじゃ」

GM:と、部屋の中には試験管を目まぐるしく扱うタビットがいます。小さな兎型の人族ですね。振り返ることもなく部屋でポーションを作っている。

モナ:「このニンジンの香りのするポーションを完成させ、ワシの心を満たしたいのじゃ。これを飲めば、半年はニンジンを食べずとも満足できる」

トリッシュ:「あれ? 食べたい訳じゃないんだ」

モナ:「食べたい欲こそが諸悪の根源なのじゃよ」

プリムラ:「すごい。ストイックさがおかしい方向に行ってる……。何でも作っちゃいそう。貴方がナイトアイを作ってる訳じゃないんですよね?」

モナ:「うん? ……そういう面倒臭い、厄介ごとを生むような名前を近づけるな。ワシの管轄外じゃから、勝手に自分たちで調べろい」

GM:と、モナは身分証を貴方達に投げつけます。

トリッシュ:「え、身分証? なんで? 調べろって?」

GM:はい。この魔術師ギルドの地下には、物凄い蔵書の図書館があるんですね。そこで調べれば大抵の薬品は作れるのだ、と説明してくれるのです。

1号:ヒエー!

モナ:「このニンジンの香りのするポーションも、図書館でやっと見つけた薬なんじゃ。別にオリジナルではないのでな。つまり、何を作るかさえ分かっていれば素人でも時間を掛ければ見つけられるってことじゃな。だから、お前らは他人様の時間を使わずに、自分の時間を使って調べろい」

プリムラ:「ははは。納得です。それじゃあ図書館に行きますかね」

トリッシュ:すぐに本に飽きるので、「プリムがんばってー?」

プリムラ:必死に頑張ります。

GM:エックスも手伝います。


***


――図書館で判定をして欲しいと言う場面なのですね。文献判定と言うのがありまして、職業能力のセージと、基礎ステータスの知力の能力値が有効な判定です。

2号:結果13です。

GM:あ、早い。12を超えたら見つけられます。ということで、ナイトアイの製造方法を見つけました。

2号:よかった。結構ギリギリでしたね。『誰にでも出来る魔薬入門!――これで貴方も荒稼ぎ!』帯にはやばい犯罪の重鎮が「これで私も稼ぎました」って顔写真付きでコメント寄せてそう(笑)。

GM:書いてありそうですね(笑)。さて、ナイトアイの詳細です。まず必須の技術として、操霊魔法レベル5を使用できないといけません。

2号:ほうほう。なんかわかってきた(笑)。

GM:そして材料として、穢れた頭蓋骨、ゾンビの目玉、恨みと涙の結晶。そして数種類の薬草と一緒に綺麗な水(蒸留水)で煮込むそうです。

2号:そこ綺麗な水なんですか?!

1号:釈然としないものを感じる。

2号:お肉と野菜とケーキと唐辛子を昆布出汁で煮込むみたいな。

GM:大正解(笑)。そして、大事な所ですが、水が完全に蒸発するまで煮込んで、絶対に焦げ無いようにしないといけないようです。

2号:それってかなり時間かかりますよね。

GM:そうですね。水分の量次第ですが、完全に蒸発するってなると大量となるとかなりの時間が掛かりますね。

2号:ちなみに材料として、水以外のものはどう手に入れるか知っているものですか?

GM:そうですね。冒険者の基礎知識として、アンデッドモンスターからドロップできる物だと理解しています。

1号:ようはアンデッドじゃーん。

2号:この辺りでそういったモンスターの出る情報ってあるんですか? そういった物が沸いている場所がいないとまずいなって。でなければ、自前で作っているのもあるなと(笑)。

GM:後者だとやばさが増しますね。(笑)。――明確ではないですが、迷宮だらけの街なので、アンデッド限定迷宮とか、植物系限定迷宮とかあると思うので。

2号:ピックアップダンジョン!

GM:ですです。



***


トリッシュ:「作り方わかったけど……」

プリムラ:「彼らの製造場所に、操霊魔法5レベル以上の人がいるってことがわかりますね」

トリッシュ:「どこで製造しているのかってなるんだけど――綺麗な水が大量にとれる場所ってさ。ほら、この地図に書いてある『泉の迷宮』ってどうなの? エックスさん下町にいるし知っているんじゃないかって」

エックス:「まさしく。下町の生活はそこで沸く綺麗な水のお蔭で生活ができているよ。水が良いってのは大事だからね」

プリムラ:「そんな大事な迷宮の片隅で、薬を製造している人たちがいる。と」

GM:腐っても元迷宮ですし。

トリッシュ:魔術師ギルドの図書館か……聞き込みできないかな。「最近なんか、操霊術師に属していて、怪しい薬を作って補導された人とかませんか。5レベルくらいの」って(笑)。

GM:ではそこで司書さんあたりが来て、「そろそろ閉館の時間なのですが~」と声を掛けて来たことにしましょう。

1号:ありがとうございます(笑)。

司書:「そうそう、この辺の本を借りて一月くらい姿を見ていない学生さんがいなくて」

トリッシュ:「その学生さんの名前って聞いてもー?」

司書:「いいですよ。キリアス君……ですね」

トリッシュ:「どの辺に住んでるとかはさすがにー?」

GM:さすがに……とも思うのですが、行方不明の状況もありますし教えます。

司書:「当ギルドのすぐ裏手に、寄宿舎がありまして。学生は皆そこに下宿しております」


***


GM:キリアス君の部屋まで省略します。部屋の様子を伺うと、ご想像の通り返事は無いです。誰もいないのは外からでもわかります。

1号:そうだねー、入ってみたいよね。

GM:ええ、ええ。入りたいですよね。侵入する為の方法、ありますよね!

1号:お待ちかねの鍵開けタイム♪

GM:ルルブ1の109ページです♪ 待ってました。

1号:スカウトツールもしっかり持ってます!

GM:それなら目標値11で開きますね。

1号:問題な……あれ? 1と2で。結果は7。

GM:なんだって?! えっと、一回目の失敗ですね。時間を置いてやれば、再挑戦もできますよ。

1号:うーん、そんなことより運命変転しちゃおうかな。人族の中でも、現実世界の人間とほぼ近い姿形の『人間』は、一日に一度、判定のサイコロをひっくり返すことができるのだ!

GM:ですね! サイコロは5と6になり成功。鍵が開きます。……トリッシュの性格だと、ノブごと取ってそう。

1号:鍵開けかっこ物理!


***


トリッシュ:「それじゃちょっと力を込めてっと」

GM:大丈夫。鍵開けでちゃんと開きました。扉が開きますと、机と寝具以外、部屋中が本で埋もれています。

プリムラ:「うわあ、ひどい本のタイトルだ。『作りやすい魔薬』とか、『危ない薬大全』」

GM:そうですね。『新しい魔薬』『旧き良き魔薬一覧』とか。

1号&2号:うえーーー。

GM:机の上には試作していた魔薬と、プリムラさんがさっき読んだ本が開きっぱなしになってます。

プリムラ:「トリッシュ見て! 『貴方にもできる魔薬の作り方』だ!」

GM:そんな名前でしたっけ?(笑)。まあその本にたくさんの付箋がつけられていて、当然ナイトアイのページにも貼ってあり、キリアス君のメモ書きなんかも挟んであります。

プリムラ:「トリッシュ、これ。読んでみましょう。」

GM:ありがとうございます。キリアス君は本当に真面目な子だったみたいで、細かくメモが書いてあります。材料の名前に丸とかつけて、「下町の水源:泉の迷宮なんか良いか。しかし、引き込み水路や大型の煮沸装置を作るには資金が足りないな。」「またナイトアイの副作用は良くないな。良しておこう」と書いてあります

トリッシュ:「んん?」

プリムラ:「資金が足りないから、ではなくて、副作用で諦めているのか。こんな薬を作るわりに、ちゃんと倫理観がある子だったのかな」

トリッシュ:「これはあれかな、連れてかれて作らされているのかな」

プリムラ:「泉の迷宮に下見をしている時に、悪い人に見られていて目を付けられたとか」

トリッシュ:「その方が強い気がしてきたー! いずれにせよ、泉の迷宮で作っているのは確実になったね。ちょうど良いから、ナイトアイの製造を止められるし、キリアス君も助けられて一石二鳥だよ!」

プリムラ:「まあ分からないですけどね」

トリッシュ:「その時は衛士隊に突き出しちゃえばいいんだよー!」

プリムラ:「それもそうですね! 一回作ろうとはしてますし、誤差誤差!」

トリッシュ:「それじゃ泉の迷宮を調べに行く構えを整えなきゃだね」

プリムラ:「泉の迷宮って……そんな施設を用意する広さとかあるんですか?」

エックス:「あるね」

トリッシュ:「もう夜になるし、明日からその準備をしようか」

プリムラ:「わかりました、トリッシュ。引き続き明日も頑張りましょう」


***


『Scene5:泉の迷宮の物語』へ続く。

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