Scene5:泉の迷宮の物語。
トリッシュ:「さて泉の迷宮なんだけど、これは終わってる迷宮なんだし、中の地図とか、詳しい人はいないのかな?」
GM:下町の生活を支える施設と言えるので、衛士隊が地図を持っていて管理しているのではないかと気づくでしょう。
プリムラ:「街の管理で、衛士隊のところに行ってみませんか?」
トリッシュ:じゃあ行きましょう。「ガーディくんいますかー?」
受付:「どのようなご用件ですか? アポイントメントは?」
トリッシュ:「ガーディ君の方から受けた依頼に対しての一次報告、そしてご相談の必要が発生したので参りました」
***
2号:「トリッシュってそんなしっかりしてましたっけ?!」
1号:「うるさいなー」(笑)
GM:受付は受付ですからね、ガーディ君は二人の報告を受けて、泉の迷宮の地図を持ってきてくれます。そもそもそんなに複雑な迷宮ではないので。
2号:潜んでいそうなところとか、目星付けられそうですね。
GM:ふむ……そうですね。地図も大雑把だったのかもしれない。泉の迷宮の中は特に地図がないもので。
1号:あら。
2号:まあ、それはそれで。
***
トリッシュ:「ねー、ここでいいの?」
プリムラ:「わかり辛いですね。」
――泉の迷宮は、入り口からとめどなく水が溢れていた。周りに生け垣を作り、その水をため池にしている。迷宮内へ入るには、船を利用する必要があった。
管理用の小舟に乗って、トリッシュとプリムラは入っていく。
GM:泉の迷宮を進んでいくと、すぐに管理棟のような建物が見えます。普段は明らかに人のいない場所。でありながら、建物からは人の気配があります。
トリッシュ:「周りの状態を確認したいね」
プリムラ:「我々が船でしか入れなかったのですし、他に船は無い……かな?」
GM:ふぅむ、船は無いんですよね。
***
1号:あれー? そうなのか。フラップみたいな所とかないの?
GM:そうですね。陸地に直接、適当に接岸をするしかないですね。
2号:陸地の先に何かあるとか?
GM:そうですね。この管理棟周辺を歩けば分かると思うので、周囲の説明をします。この管理施設は重厚な工場のような外見で、言うなれば体育館みたいな大きさの長方形の建物。正面に大きな合わせ扉があり、裏手に侵入できそうな小さな扉があります。
2号:出入りしている人物の動きや痕跡とかは見つけられますか?
GM:探索判定……かな? 足跡判定も非常にそれっぽいですね。どちらにしましょうか。足跡判定だと『残された時期や、それが向かった方角を知る為の判定』とルールブックに書いてありますね。
2号:んー、足跡だけと言うか、複数の人物の出入りとか、ここで動いた人間の『行動』を調べたいもので。
GM:了解しました。では、探索判定の『隠された物を探し出す為の判定』と言う解釈にしましょうか。有効な技能、有効なステータスはどちらも同じですね。ゲームで扱う数字はどちらでも同じですし問題ないでしょう。スカウトまたはレンジャーの技能と、知力のステータスが有効です。えーっと目標値が。
2号:ありがとうございます。それでは……11。
GM:あ、早い。11。できれば私が目標値言ってから振ってくださいね。10以上なのでギリギリ成功です。たくさんの人の中に、3匹の蛮族がいると足跡を見て理解できます。
2号:あれ?! 蛮族って言っちゃっていいんですか?!
GM:人間と蛮族だと足跡違うでしょう。数がわかるのに、そこが分からないで伝える方が違和感あるなと思って。
1号:まあレベル5の冒険者ですし、それは確かに。んー、蛮族かー。がぜん建物内を確認したいけど、こっそり見れそうな場所ある?
GM:そうですね、最初にお伝えした通り、表の正面扉と、裏の非常口がありますが。
2号:出入りしているのは裏口っぽいですよね。
1号:……裏口から出入りしているなら、表口から入る方がいいのかなって思うんだけど。
2号:そうですよね(笑)。
1号:表って、でも入ったら分かりやすい場所に出るって言うか。表口って必ず受付みたいな、入ったら誰かに見られるような気がしない?
2号:そうですね。管理施設を勝手に使っているので、だから彼らは裏口から入っているのでは? いつも使っている入口から入ったら、鉢合わせてしまうんじゃないかなって心配しています。
GM:(裏口で出入りするとは言ってないのだけど。思い込みって怖いな……)なるほど。ところで入口ですが、どちらかに限定して使っている訳ではなく、どちらも普通に使っていますよ。その上で、3匹の蛮族の出入りが直近で見つかったと言いたかったです。
1号&2号:なるほど。
1号:じゃあ普通に裏口からって言うのが良いかな。
2号:ですね。あ、じゃあ入る前にやりたいことがあります。妖精魔法のフェアリーウィッシュを使います。ここから1時間以内、何らかの行使判定をした際に一回だけ+1のボーナスを得ることができます。これを使用する申告は、行為判定のダイスが降られる前にしておかなければいけません。で、使わずに1時間経ってしまった場合も、妖精さんは帰ってしまいます。
GM:戦闘開始でも妖精さんはサヨナラしてしまい、戦闘では使えない魔法ですね。
2号:はい。さて、裏口には扉が当然あるんですよね?
GM:もちろん。鉄の扉が。鍵開けで11以上でお願いします。
1号:よーし、まかせてー。鍵開けだー!
――しかし、ダイスは無情にも1と3。技能とステータスの補正を合わせても合計で8にしかならない。
1号:この子、鍵開けめちゃくちゃ下手だな?!
GM:細かいことは苦手そうですもんね。
1号:がちゃがちゃがちゃ……開かない……。
2号:うーん、鍵開けをもう一回となると、次の判定は10分かかるんですよね……。
1号:さすがに危ないかな……。
2号:じゃあ、聞き耳判定とかして様子を伺ってからでもいいのかなと。
1号:なんだかクトゥルフみたい。
2号:え、いえちゃんとありますよ聞き耳判定。
1号:そうなの? ああ、この異常感知判定って奴?
GM:いえいえいえ、ちゃんと異常感知判定の下にありますよ。
1号:あ、あったあったあった! ごめんなさい。
2号:では聞き耳判定を……プリムラは7です。
1号:トリッシュは……あ、1ゾロ!
――ここでついにファンブルが発生。サイコロの出た目が1・1になると、どんなに補正が入ったりしても、必ず失敗と判定します。これを『ファンブル』と言います。逆に言えば、6・6になれば補正関係なく必ず成功と判定します。これを『クリティカル』と言います。
GM:はっはっは来ましたね。でも、丁度いい理由がありますね。
2号:壁が分厚くて聞こえなかったとか?
GM:それももちろんありますし、他に、中から大きな釜の茹る音や、給水管を水が流れる音、物が大きく動く音などが聞こえるのです。そのため、些細な人の動きが分かるような、繊細な音の感じではないんですよね。
1号:なんだよーやっぱり開けなくては!
2号:平気そうですね。では十分掛けましょう!
1号:では改めて……14!
***
トリッシュ:「くっそー、これがこうで……よし、開いた!」
プリムラ:「トリッシュさすがです!」
トリッシュ:「ゆっくり行くぞー。」
***
GM:良いですね。それでは20分悪戦苦闘した末、扉が開きます。扉にわずかな隙間を作って覗くと、3メートル先に蛮族が一人立っている。明らかに見張りでしょう。
1号:え、材料? (見張りを指示して)
GM:いえいえ、生きた蛮族ですよ。材料は周辺の箱に入っているのが見えます。そして、給水管の合間から蒸気が見えて、大きい釜が四つぐつぐつと煮え立ち、そこでナイトアイを作っているのでないかと推察できますね。
2号:ブラックな――
1号:――労働環境!
GM:はい(笑)。そして見張りには……見つかってないですね。確かに裏口の見張りなんですが、下っ端ですし、扉に少し隙間ができたくらいの異変にはそうそう気付かないかなと。
2号:サボっている……?
GM:いやー、実力の問題かな。
2号:それはあれですね。魔物知識で理解できる?
GM:はい。お願いします。
1号:がんばれー!
2号:応援もらったら頑張るっきゃねぇ! (ころころ)12です。
GM:見事。と言うか、見張りはダガーフッドですね。レベル1のよわよわ蛮族です。
***
トリッシュ:「プリムわかる?」
プリムラ:「はい。ダガーフッドですね。魔法に弱い」
***
GM:さらに観察をしていたなら気付くことがあります。釜の方で作業をしている人とは別に、少し高い場所から指示をしているだけのローブを着たメガネの人がチラリと見えます。
2号:何かリーダーっぽい、そういう感じの人? そのリーダーっぽい人は武装とかしているんですか?
GM:いえ、彼は武装はしていませんね。
1号:……ところでGM。ガーディが言っていたけど『摘発』ってどの段階?
GM:ここがナイトアイ製造工場ですからね。もうこの時点で摘発は完遂ですよ。
1号:そっかー。後は追加報酬をどうするかだね。敵の全容が全然見えないからなー。
2号:そのリーダーみたいな人ってどうなんですか?
GM:そうですね。リーダーみたいな人はちょっといい感じの魔導ローブを着ていて、疲れた顔をしていますね。
1号:え? 疲れた顔?
2号:あれ? リーダーとかいないで、ただ蛮族に見張らせているだけなのかな?
GM:(……おや、ここで全部見えていることになっているかも)えっと……。私の認識ですと、2人は鍵を開けた後慎重に動いてらして、敵に見つからない範囲でまずは行動しているのかなと思っています。裏口からチラッとね。なので、それ以上踏み込んで、全容を見えるようにリスクを負うならまた別の展開を用意しています。今はあくまでも、扉の隙間から覗いていて、手前にはたくさんの機器とか荷物があるので『見える範囲』の話をしています。
2号:なるほど。え、ちなみにここどれくらいの広さなんですか?
GM:えっと、体育館くらいと。
2号:あ、広いなー! それは見えないや!
――ここでお互いの認識のずれが解消された。緊張の場面が近づくと、よくありがちなことである。
1号:そうかー。じゃあとりあえず目の前にいる蛮族を倒そうか。後から出てきても、一匹減らせる訳だし!
2号:うーん。ウィンドボイスを使いたかったなー! 蛮族語は喋れない。読み書きはできるのに!
GM:惜しい。さて、当然ですけどこっそり倒したい感じですよね。それなら、隠密判定やりましょう。敵に気付かれないように行動が出来るかと言う判定です。
1号&2号:はい!
1号:13。
2号:11。
GM:うん。その値なら大丈夫でしょう。レベル1蛮族では見つけられません。先制判定不要で、命中判定。そしてダメージの算出まで一気にお願いします。
2号:行きます! おお、6ゾロ!
1号:一回てーん!
2号:同じダメージで殴っていく!
GM:同じ力でぼこっと殴るんですね。
2号:その後に誰か来ますか?!
GM:大丈夫ですね。裏口で起こった一瞬の打撃音は、作業の音でかき消されます。それでは、体育館の全貌がようやく見れます。工場の奥まった一角に、豪奢な椅子に座った威圧感のある蛮族が座っています。魔物知識をどうぞ。
2号:ええっと、一回使ってしまっているので改めてフェアリーウィッシュを掛け直してから、魔法行使判定……ああっ!
GM:おお、18すごい!
2号:いえいえ、魔物知識判定はこれからなので……しまった、11。
GM:むむむ、それだと何もわからない……。
2号:それなら指輪を割って13になるんですけど、それで何かわかりませんか。
GM:お……13だとぴったり名前がわかります。
2号:じゃあ割ります。パリーン(即答)。
GM:かしこまりました。では、プリムがちょっと意地になり、記憶の奥底から引っかかった名前を絞り出します。偉そうなそいつの名前はディアボロカデットですね。ルルブ1の444ページにいます。
2号:呪われた数字っぽい(笑)。
GM:また一方で、正面口の方に二匹の蛮族がいることも確認できます。
2号:では同様にフェアリーウィッシュから、魔物知識を二回しますね。一匹目は13、二匹目は11です。
GM:いいですね。それぞれ名前がわかります。一匹目はフーグルアサルター443ページ。後半はフーグルマンサーで441ページに乗っていますね。全部で前衛2名、後衛1名のバランスの良い布陣の蛮族ですね。
1号:ふーむ。これはちょっと。
2号:相手をするのは厳しいですね……。
1号:こっちは二人だからね……。
2号:フェローを連れてこれないですかね?
1号:あ。いいね。
GM:うん、いいですよ。
2号:……ここで引くなら、ダガーフッドの死体を置いておくわけにはいきませんが。川に沈めちゃいます?
1号:浮いてきちゃうよ(笑)。
2号:じゃあ一緒に船に乗せて……蛮族ですし、戦利品を取ると言う体で、討伐した証を取りますし、処理ができるのではないかなと。
GM:いいですね。そういうことにしましょう。では戦利品判定をどうぞ。
1号:5。
GM:5……だと何もないですね。確定で手に入れられる、粗末な武器だけ回収できます。
2号:それでは、それを討伐した証としてガーディさんに報告します。ついでに報告の分の報酬は確定しますね。
GM:見事。その通りです。
1号:とりあえず報告してー、また明日行ってくるねーで回復したら良いかな?
2号:そうなりますかね。そうかな……。
1号:うんうん。戦力も足りないしー。
GM:はい。
2号:まあでも、あれか。あ、いや。一匹いなくなって、のんべんだらりとしていいものかと思いまして。
1号:それもそっかー。じゃあ誰か連れて一回戻ってみる? その辺、手が空いている人がいないか探します。
GM:はい。ではフェローを探すフェイズに移りましょう。フェローとしては、四人準備をしていたのですが、お二人に調度いい仲間は、二人かな? 別に二人とも連れて行ってもいいですが。
1号:んーでも人が増えると報酬を割らないといけないじゃない? 追加報酬の『黒幕を捕まえて一人1000ガメル』も、こっちが勝手に増やした仲間の分まではもらないでしょ?
GM:そうですね。2000ガメルを三人とか、四人で分けることになります。
1号:そうだよね。できるだけ連れて行くのは減らしたいよ。
GM:(……かといってあまり厳しいのもなぁ……あ!) 一人、タダで連れていけそうなフェローがいますね。
1号&2号:タダ?!
GM:そうです。それこそ、目の前にいる彼――ガーディ君です。
1号&2号:ああ! やったー!
――二人は納得する。ガーディは新人で、衛士隊の腐敗に心を募り、自身の正義心に従って動いた人間だ。『そうだこの子がいなければ』と1号と2号は歓迎するのであった。
GM:彼なら報酬を分ける必要もないですね。払う用意をしていた側ですし。
1号:よし、それなら善は急げだ。裏口の扉開いてるかなー?
GM:さすがに開いてます。
2号:不用心な。
――ガーディを交えれば、彼はもう行くためにうずうずしている。早く行くぞと二人の前に立ち、ナイトアイ製造施設の元へと舞い戻った。時間はもう深夜だった。
GM:工場内部は変わらず作業中です。ディアボロカデットの周囲はだだっ広いので、奇襲と言う訳にはいかなさそうです。
2号:作業している人に何か話を聞くってことはできないかな?
GM:そうですね。作業している人たちは持ち場があるのでバレやすいですが、監督している魔導ローブを着たメガネのリーダーは移動しています。上手く死角に呼び込めば、少しだけ会話はできるかもしれませんね。
1号:じゃあサッと呼び込んで行こう。
***
トリッシュ:「お話いいですかー?」
メガネ:「ヒィ! い、命だけは!」
――死角に引っ張り、メガネ君が声を上げないよう制止する。
メガネ:「な、な、一体何が」
プリムラ:「警察の方から来ました」
メガネ:「――つ、ついに助けが!」
トリッシュ:「とりあえず状況を教えてくれないかなー?」
メガネ:「なぜか僕がナイトアイを作れることを蛮族が知っていて、掴まって」
トリッシュ:「……君、もしかしてキリアス君?」
キリアス:「ぼ、ぼくの名前をどこで?」
トリッシュ:「ナイトアイのことを調べてたらすぐに君に行きついたよ」
プリムラ:「魔術師ギルドの方でも行方不明扱いでしたからね」
キリアス:「そうでしたか! ギルドの方から捜索願いが出ていたんですね。そうか、助かったー」
トリッシュ:(そうだっけ?)
プリムラ:(いえいえ全くありません)
――目をそらす二人。ガーディはきょとんとしている。
トリッシュ:「あいつを懲らしめたいんだけど、何か良い話はないかい?」
キリアス:「そうですね……。普段はもう一匹蛮族がいるのですが、今日は外に出ているので、いいタイミングだと思います」
プリムラ:「なんて蛮族か分かります?」
キリアス:「レッサーオーガ……と聞いたことが」
***
2号:名前で魔物知識判定って出来ますかね?名前を聞いて思い出す的な感じで。
GM:そうですね、実際ありますよねー。名前を聞いてあーそれそれって思い出す時。失敗したら、勘違いで思い出しても良いですね。タヌキみたいな獣で、後ろ足で立ち上がり熊のように威嚇してくる――。
1号:レッサーパンダ(笑)。
2号:プリムなら大丈夫。15です。
GM:それならバッチリですね。弱点まで抜ける。残念ながら、今回は出ない敵ですが。ルルブ1のページ442ですね。
1号:あ、共通交易語! こいつが悪い事してるなー。
GM:ですね。まあ今回はもう出てこないのであしからず。強調します。
1号:あれー? あのカミュって子、人間ですよね?
GM:そうですよ(強調)。
2号:キリアス君に、今作業している人たちにもすぐ避難できるよう声を掛けておいてもらえませんかね?
GM:あーいいですね。そろそろ業務に戻らないと、姿が見えなくて変ですし。この辺りで会話も終わりにしましょう。
1号&2号:了解です。
GM:よーし、それでは最終決戦に行きましょうか!
***
GM:キリアス君が戻り、作業している人々に耳打ちをしていきます。全体を回った所で、トリッシュとプリムラはディアボロカデットへと真っすぐ向かっていきます。
『Last Scene:豪腕唸り、彩華舞う』へ続く。
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