第16話 一寸先に見かければ入ろうぞ。

 「いらっしゃいませ〜」


 「うむ。」

最近は〝えこばっぐ〟なる物が必要らしい。

..ふろしきでいけるか?


「平然とれじ袋とやらを行使していた。しかしどうやらそれは大地を壊す要因らしい」

道理でしゃかしゃかと虚な音がする訳だ。


「軒並み〝冷〟を帯びた麺が無いではないか。仕方ない、御膳に手を出すか..」

御膳は苦手なのだがな、隅にある謎の漬け物に毎度恐怖を覚える。まるで手が出んのだ、異質が拙者の平然を壊そうとして来るのだ。


「腹を満たしたいと言うよりは冷を取りたい。

麺が駄目なら氷となるが、どうしたものか」

氷菓の城。

常に新顔を揃えているが間隔が酷過ぎる。

漸く出会った安寧の味が、次の週にはごっそりと異なる味に挿げ替えられている。


「鳴く以前にホトトギスが木に止まらない」

気付けば枝ごと潮時という訳だ。


「結局のところ抜きん出ない絵に描いたような氷菓を手に取る事になるのだが..」

道が無ければ旅路は追えん。

結局のところ今回も同じ箇所に立っている。


「いらっしゃいませ〜」


「……。」


「お弁当は温めますか?」


「かたじけない。」


「え〜っと、温めますね..」

〝はい〟って言え!

わかんねぇよ、いいのかやってほしいのか。


「お会計方法をタッチして下さい」


「タッチ..」

成程からくりか、無論紙だ。

..と思っている事だろうな、甘いぞ!


「雷神にて候。」


「ス、スマホ決算だと!?」

なんだよ雷神って、払えよいいから。


「フン。」

とうに英世など断ち切ったわ!

いつまでも紙にて狼狽える拙者ではないわ!


「……どこを押せばいいのだ?」


「..無理すんなよな。」

キャッシュレスは至難で御座る。


今日の忍法

『雷神式妥協斬り』

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